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井上尚弥の背中で奮い立った平岡アンディ ラスベガス完勝で得た自信「世界は遠くない」 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byGetty Images

posted2020/11/08 17:02

井上尚弥の背中で奮い立った平岡アンディ ラスベガス完勝で得た自信「世界は遠くない」<Number Web> photograph by Getty Images

ラスベガスのリングで大きな成長を示した平岡アンディ。危なげない完勝劇だった

父コジョ「国内で相手がいない」

 父であり、トレーナーであるガーナ系アメリカ人のジャスティス・コジョ氏もそんな状況に焦りを感じていたのかもしれない。技術的にも体力的にも成熟期を迎えつつある息子のキャリアについて、こう話していた。

「この1年で精神的なムラもなくなり、ボクサーとして1つ上のレベルに上がったと感じている。その反面、強くなりすぎて、国内ではなかなかタイトル戦を受けてくれる相手がいない、という現実には頭を悩ませていた。そんなタイミングでコロナが広がった。タイトル戦どころか、試合開催自体が難しい状況になってしまった。でも、それはみんな同じだから仕方ない。大切なのはこの時間でアンディが何をするか、ということだから」

黙々と練習を続ける井上尚弥

 プロボクサーにとって、興行の目処が立たないことほど恐ろしいことはない。アンディ自身は、「この状況だからこそポジティブに捉えました」と言うが、ジムにも満足に通えず、スパーリングパートナーも呼ぶことができないまま、モチベーションを維持することの難しさは容易に想像がつく。延期、延期を重ねたこの半年間の過ごし方についてこう振り返る。

「拳だけで食べていくという決意も込めて、次の試合後にバイト先を辞める予定でした。ただ、『このままボクシングが出来なくなるかもしれない』という不安もよぎり、続けさせてもらったんです。正直にいえば、7月頃までは気持ちを切らさずにやれていましたが、8月には『本当に試合が出来るのだろうか』と、どうしようもない不安に襲われましたよ。そんな精神状態でボクシングは出来ないので思い切ってトレーニングを休み、気分転換に近場に出かけたことがあったんです。僕の人生でもほとんど初めてというくらい、ボクシングから離れた時間でした。その小旅行がリフレッシュに繋がり、翌日には再び活力が戻ってきた。

 それにジムで尚弥さんを見ると、ツラいはずなのに全く表情に出さず、黙々と高いモチベーションで練習をしてるんです。その背中を見て、まだ予定が見えているだけ幸せで、試合ができないボクサーの方が多いということに考えが及ぶようになった。だからエドワーズ選手のプレッシャーというよりは、『周囲からの期待に応えないといけない』『日本を代表して来ているから下手な試合はできない』という責任感のようなものは頭にありましたね」

【次ページ】 重要視した基礎トレと反復作業

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