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谷井菜月がリードユース日本選手権でみせた “次元のちがうパフォーマンス”
posted2020/10/30 11:00
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
Ichiro Tsugane
「これが世界のトップレベルだ」と言わんばかりの圧巻のパフォーマンスだった。
スポーツクライミングの20歳未満の選手を対象にした『第8回リードユース日本選手権』が、10月10日~12日に富山県南砺市にある桜ヶ池クライミングセンターで開催された。
今年の誕生日で19歳か18歳になる『ジュニア』、17歳か16歳になる『ユースA』、15歳か14歳の『ユースB』、同13歳か12歳の『ユースC』の4つのカテゴリーに、男女あわせて255選手が出場した。
今大会はカテゴリーごとに順位を競ったが、登るルートは基本的にはカテゴリーの枠を超えて同一。女子は予選の2ルートは全カテゴリー共通で、決勝ルートはジュニア、ユースA、ユースBが同じ課題。男子は予選、決勝とも体格差のあるユースCのみ別ルートで、ほかの3カテゴリーは同一ルートで争われた。
このため各カテゴリーの表彰台の行方とともに、もっとも高くまで登るのは誰かにも注目は集まったなか、格の違いを見せつけたのが女子ユースAで優勝した谷井菜月だった。
「久しぶりに登りたくて」
谷井は昨シーズン、W杯リードのデビュー戦となったブリアンソン大会で3位となって表彰台に立つと、その後もW杯リードでコンスタントに8名で争う決勝に進出し、W杯リードの年間ランキングで3位になった。
谷井と同じく、ユース年代ながらも日本代表に軸足を置くジュニアの伊藤ふたばやユースAの森秋彩は、今大会の出場を見送ったのに対し、谷井は「W杯が新型コロナの影響でなくなったので、大会ならではの課題を久しぶりに登りたくて」と出場。
すると、「ヤーニャ・ガンブレットやソ・チェヒョンに勝ちたい」と、来シーズンのW杯リードで世界の頂点に立つことを見据えたトレーニングの成果を存分に発揮した。
決勝課題は完登に54手を要するロングルートで、ジュニア、ユースA、ユースBのほとんどの選手が6分間の競技制限時間に苦しめられたのに対し、谷井はただひとり完登した上に、制限時間を1分ほど残してというパフォーマンスだった。
「手数が多いルートだったので、タイムオーバーにならないようにペースを早めて登るように意識しました」
こう明かす谷井と同様に、ほかの選手たちも「登るスピードを早めよう」、「レストを短くしよう」と考えていたという。しかし、それを競技中に実践できる対応力を谷井は備え、他に選手たちは持ち合わせていなかったということだ。