畠山健介のHatake's roomBACK NUMBER
畠山健介、ボストンからメッセージ。
いまできることは「トランジション」!
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph byKensuke Hatakeyama
posted2020/05/10 11:50
拠点を置くボストンからメッセージを送ってくれた畠山健介。ラグビーにおいても重要な「トランジション」への対応の大切さを訴えた。
暴動も買い占めも起きていない。
身内や友人らは「アメリカ、大丈夫?」と心配する声を送ってくれる。
アメリカの報道を目にする日本の人たちにとって、「アメリカの状況=ニューヨークの中心地の状況」というような認識の方が多いのではないだろうか。
感染者数と死者数が増える中、買い占めや都市封鎖の解除を求めるデモなどが報じられる一方で、約16万人が回復しているという報道もある。アメリカのすべての州、すべての街が混沌としているわけではない。
少なくとも僕たちの住むボストンも感染者数は多いというデータがあるが、暴動もデモも極端な買い占めも起きていない。混乱はなく、規律や節度が保たれた自粛生活を、みんなが心掛けているように感じる。
娘が通う公立の小学校は早い段階で閉鎖され、オンライン授業に移行した。非常事態宣言の最中に8歳の誕生日を迎えた娘は自宅で慣れない自粛生活と、慣れない英語のオンライン授業を頑張っている。
「プラスの熱」と「マイナスの熱」。
昨年9月、アジア初となるラグビーワールドカップが日本で開催され、各国の代表チームと多くのラグビーファンが来日し、伝統と最先端が融合した4年に1度のラグビーの祭典は、日本の多くの人々にラグビーの魅力と熱を伝えてくれた。
試合会場、パブリックビューイング、テレビやSNSなど様々なメディア媒体を通じてラグビーを観戦した人たちから発生した熱は、日本代表の躍進を後押しし、大きなムーブメントとなり日本中に多くの勇気と感動と興奮を与えてくれた。
それから約半年。勇気や感動、興奮を与えるスポーツの「プラスの熱」とは全く異なる、禍々しい「マイナスの熱」が人から人へと感染し、世界中で猛威を振るっている。その熱は人命や人々の健康はおろか、今までの生活、仕事、日常すらも奪っている。
スポーツ界に身を置く者として、日本のスポーツ界を見れば、東京オリンピックが延期され、ラグビーのトップリーグなど様々なスポーツのリーグ、シーズン、トーナメントが中止、延期となっている。渡米前には想像もできないほど状況は変化した。