メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
幾多の危機を乗り越えてきたMLB。
失われた時間で見直すべき原点。
posted2020/04/20 07:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
米国中から球音が消えて、早くも1カ月が経過した。依然として、メジャー全球団が活動を停止し、今もなお延期されている開幕日のメドは立っていない。
スポーツ関連の米メディアは、かつての名場面、好試合を放送、特集するなど工夫しているものの、やはり結末が不明で筋書きのない生中継の躍動感には遠く及ばない。
その一方で、全米中、または各自に母国でトレーニングを続けている選手たちは、ツイッターやインスタグラムなどのSNSなどを利用して、個人的な近況をファンに伝えるほか、感染拡大防止への呼びかけを繰り返すなど、それぞれが目の前の現実と向き合っている。
彼ら選手たちが今、何を感じ、何を考えているかは、正確には分からない。
ただ、プロ野球は、ファンあってこそ成立しているという、当たり前の事実を、あらためて強く認識しているのではないだろうか。
数カ月前の話題はサイン盗み事件。
数カ月前、当たり前のように新たなシーズンを待つ状況は、まったく違っていた。
新型コロナウイルスの感染が拡大する前の昨オフ、米球界は2017年のワールドシリーズなどで最新の電子機器を使い、組織ぐるみでサイン盗みをしていたアストロズ、翌年にワールドシリーズを制したレッドソックスの問題で揺れていた。アストロズのジェフ・ルーノーGM、AJヒンチ監督が処分を受け、当時深く関与していたレッドソックスのアレックス・コーラ監督、さらに就任したばかりだったメッツのカルロス・ベルトラン監督が、職を失った。
対戦チーム、そして何よりもファンを欺いた行為は、言い訳の余地すらなく、集中砲火の非難を浴びた。アストロズの選手には、殺人予告めいたメッセージが届いたほどだった。それほど、熱烈なファンは、裏切り行為に憤っていた。メディアも含め、それらはほぼすべてが極めてラディカルかつ攻撃的だった。
今思えば、一連のサイン盗み事件は、商業主義にどっぷりと浸かり、利益重視に偏重した末、好景気と人気に慢心した米球界への警鐘だったとも思えてしまう。