ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
世界を7度防衛、でも威圧感はなし。
拳四朗というボクサーの真の魅力。
posted2020/03/23 15:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Toshiya Kondo
WBC世界ライト・フライ級チャンピオンの寺地拳四朗(BMB)が防衛テープを7まで伸ばしている。最近の安定した戦いぶりを見ていると、具志堅用高氏が打ち立てた世界王座の連続防衛日本記録13を抜く可能性は大いにあると言えそうだ。
一方で、それほどの実力者でありながらも、拳四朗というボクサーの魅力が多くの人に届いているとは言い難い。
「自分のボクシング、絶対に一般受けはしないと思いますね。派手なわけでもないですし、淡々としているというか、負けるリスクを極限に減らした戦い方ですし。なかなか伝わらないのかな、と思います」
本人の言う通り、拳四朗は全身から殺気を醸し出して相手に襲い掛かるわけでもなく、手に汗を握るスリリングな打撃戦を好むわけでもない。制服を着てしまえば高校生で通りそうな風貌と、柳のようにふわふわとした語り口も手伝い、万人が抱く「強い」というイメージからどうしても離れがちだ。
体の強さを生かしたアウトボクシング。
しかし、せっかくの素晴らしい力を持っているのに、それが伝わらないのは「もったいない!」ということで、拳四朗の強さの秘密を解き明かすのが本稿のテーマである。
まずは1年半ほど前から本格的にタッグを組む三迫ジムの加藤健太トレーナーに話を聞いてみた。意外なことに、最初に出てきた答えは「体の強さ」だった。
「ボクも最初、拳四朗は体が弱いと思っていたんです。横からちょっと押したらグラッとなるような。そうしたらものすごく体が強い。相手に押し負けないし、動いてパンチを打っても体がブレない。軸がものすごくしっかりしている。驚きました」
この体の強さを生かして拳四朗はアウトボクシングをする。細かくピョンピョン跳ねるようにフットワークを刻み、素早く出入りを繰り返してジャブやボディブローをコツコツと当てていく。相手のパンチはバックステップで徹底して外す。ブロッキングやボディワークはあまり使わない。