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“ゾーン”を自ら創り出す。
世界1位・見延が狙う2つの金。
~フェンシング史上最強の選手へ~
posted2019/11/02 09:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
この6月、フェンシング男子エペで「日本選手初の世界ランク1位」が誕生した。見延和靖(ネクサス)だ。ここ1年あまりの間にバドミントンの山口茜や桃田賢斗、テニスの大坂なおみがそれぞれの種目で成し遂げている「史上初」の快挙。その流れに乗った。フェンシングでは'09年の男子フルーレ・太田雄貴(現日本協会会長)以来だった。
初出場だったリオデジャネイロ五輪で6位入賞を果たした見延が一気に飛躍したのは、'18-'19シーズンだった。W杯やグランプリ(GP)大会で優勝し世界ランク1位に上り詰めた。快挙の背景には「2種類の“ゾーン”のコントロール」(見延)がある。
「先に経験したのは視野が広くなる方のゾーンで、それは会場で母親の声が聞こえるような状態です。後から経験したのは視界が狭くなる方のゾーン。動きながらでも相手の髪の毛の一本一本まで見えてきます」
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今年3月に優勝したGPブダペスト大会でこの2種類を経験した見延は、大会後に試合中の精神状態を何度も振り返り、そのとき自分に何が起きていたかを分析した。そして、5月のGPカリ大会では自らゾーンを創り出し、さらには前者と後者を使い分けする境地にたどり着いたという。
「僕が目指すのは史上最強のフェンサー」
9月に東京で予選が行なわれた全日本フェンシング選手権では、拮抗したスコアでも慌てることなく試合を進めてしっかりと勝ち上がり、さすがの実力を見せつけた。男子決勝は11月3日、東京・渋谷公会堂で行なわれる。相手は今年6月のアジア選手権で優勝した世界ランク14位の山田優(まさる)。「オーソドックスなスタイルの僕と、トリッキーな技を持つ優との対戦なので面白くなると思う」と楽しみにしている。
日本の男子エペには世界ランク5位の加納虹輝や同20位の宇山賢もおり、1チーム3人(プラス1人の交代選手)で競う東京五輪の団体戦で十分に金メダルを狙える陣容だ。
「僕が目指しているのは史上最強のフェンサー。東京五輪はその通過点だと思っている。良いチームメート、良い時代に恵まれているので目標を成し遂げたい」
見延の視界には個人と団体の金メダルがしっかりと映っている。