野球善哉BACK NUMBER
楽天の新監督は日本野球の革命家。
「常識を度外視したシフトを考えた」
text by

氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2019/10/31 18:00

セオリーを疑うのにはエネルギーがいる。三木肇監督は、その惰性に抗う力を持った指導者だ。
ランナー一塁で長打警戒は正しいか。
世界中で野球は日々進化しているのに、日本の野球界だけに生き残っているセオリーは存在する。
例えば、無死ニ、三塁での前進守備や、ランナー一塁で一、三塁線を締める守備シフトなどだ。
三木がこんな話をしていた。
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「ランナーが一塁にいるときに一、三塁線を締めるという考え方がありますよね。長打をケアーするためのセオリーだと思いますけど、それは本当に正しいんかなと考えるようになりました。長打を防ぐためのシフトではありますけど、一塁に走者がいるのでセカンドとショートは二塁寄りに守りますよね。つまり一、二塁間と三遊間がめちゃくちゃ空くので、ヒットゾーンが広くなっている。
これをやめて一、三塁線を開けてヒットゾーンを狭めるやり方もあると思う。これはセオリーから離れることで思いついたものでした」
左右非対称な珍しいシフト。
また、実際の試合で見たものでは、1死ニ、三塁での珍しいシフトに感銘を受けたものだ。
それはある試合でのことだ。
1死ニ、三塁のケースでは、得点差が大きくない限り日本のチームは内野が前進守備を敷くことが多い。だがこの時のヤクルトは、セカンドの山田哲人が前進する一方で、遊撃手の大引啓次は定位置を守っていたのだ。
これが三木の発案によるものだった。
「ランナー二、三塁での前進守備は現役時代から疑問に思っていました。二、三塁で守備側が定位置だったら、二塁ランナーはリードを大きく取れない。しかし前進守備をすると、ニ塁走者はノーマークになる。リードが大きくとれて走塁がしやすいんですよね。日本ハムのファームコーチ時代に、そのことに気づいていろいろ試してみました」