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26歳になった天才少女・岩渕真奈
「私がサッカーを続ける理由」
posted2019/10/09 11:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Kiichi Matsumoto
幼い頃から天才少女と世界中から注目を集めた岩渕真奈は、少女時代と変わらない人懐こい瞳と、弾けるような笑顔で語った。どんな質問をしても、巡り巡って、答えはいつもサッカーにかえってくる。
今や、チームでも日本代表でもベテランとしての存在感を放つ彼女は、なぜそんなにもサッカーを愛してやまないのだろうか。
小さい頃は、ただ楽しかったからだと思いますよ。小学生のときはサッカークラブに男子しかいなかったのですが、男の子に勝てるのがうれしかったし、負けたら勝つまでやるぐらい、ずっと戦っていました。1対1の競り合いでもそうだし、一緒に組んだフォワードの子よりも点が取りたいとか、チームメイトが点を取って勝っても嬉しくなかったり。くだらないことですら、本当に負けるのが嫌でした。
だけど、U-17女子ワールドカップに出た頃、15~16歳の時の自分は、先輩たちほどきちんとサッカーに向き合っていませんでした。その時期の(日テレ・)ベレーザって、なでしこジャパンの選手しかいないぐらい強いチームだったんですよ。だから毎日の練習が嫌で仕方なくて、練習時間ギリギリに行ったり、練習後も面白くないから早く帰っちゃったりして。
もし今、自分の周りにそういう若い子がいたら、もうちょっとちゃんとサッカーやってよ! って思うでしょうね。だからと言ってあの頃の私はサッカー以外のことに力を注いでいたわけではないんですけど、「もうちょっとしっかりしなさい」と言いたいぐらい、パッパラパーでしたね(笑)。
正直、あの時期、もう少しちゃんとサッカーと向き合っていたら、もっとよかったんじゃないかと思っています。
毎日が戦いだったドイツでの生活。
意識が変わったのは、ドイツに行く1年ぐらい前かな。澤(穂希)さんとか、チームの主力選手がINAC(神戸)に移籍をしちゃって。ベレーザに取り残された感じだったし、監督が替わったりとか、試合にも定期的に出るようになって、しっかりやらなくちゃいけないという気持ちが強くなりました。
ドイツでの経験も大きかったですね。海外の選手って1つの勝負に対しての熱がすごい。毎日が戦いというぐらい激しくて、選手たちもピッチはもちろん、外でも自分の意見をしっかりと主張してくる。そういうなかで、どんな時でもぶれずに、自分の意見を持つ大切さを知りましたし、仲間と勝てる喜びというのを改めて感じることができました。今では、自分が点を取って勝つのが一番いいのは間違いないけれど、それよりもチームが勝てばいいやと思えるまでになりました。