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松井秀喜とヤンキースの幸福な関係。
“日本の”野球殿堂入りを祝う式典。
posted2018/09/02 11:30
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Kyodo News
温もりに溢れた拍手を背に、濃紺のスーツに身を包んだ松井秀喜氏は、にこやかな笑みを浮かべていた。
8月27日、ヤンキースタジアムでのホワイトソックス戦の試合前、松井氏の「日本野球殿堂入り」を祝福するセレモニーが行われた。中堅後方の大型スクリーンには、巨人時代に量産した豪快なホームランの映像が映し出され、ブライアン・キャッシュマンGMから記念品が贈呈された。
確かに、わずか数分間の短い時間だった。
ただ、そこには、2009年のワールドシリーズでMVPを獲得したというだけでなく、日本と米国の両球界で、常に真摯にプレーを続けた松井氏に対する、深いリスペクトが満ちていた。
「日本の野球殿堂入りにもかかわらず、ヤンキースタジアムでお祝いして頂き、ヤンキースの皆様に心より感謝しております。ヤンキースがプレーオフで勝ち進む事を祈っています」
松井は日本語と英語で感謝。
セレモニー後、松井氏はヤンキース広報部を通して、日本語、英語の2カ国語で、感謝のメッセージを残した。「日本の野球殿堂入りにもかかわらず」との言葉は、紛れもなく、松井氏の本音だったのだろう。
現在、ヤンキースのGM特別アドバイザーとして、傘下のマイナーを巡回し、若手を育成する立場の松井氏にとって、少しばかり照れくささを感じるほどの「リスペクト」だった。
1776年に独立を宣言した米国は、移民と開拓の国である一方で、国家としての歴史は浅い。そんな文化背景の影響なのか、特に困難な道に挑んできた「先人」に対する畏敬の念は、ことさら強いように感じる。
野球界でも、そんな空気は変わらない。有色人種として、初めて人種の壁を突き破ったジャッキー・ロビンソンの存在、活躍が、今もなお、球史の大きな節目として称えられているのは、その顕著な一例だろう。