野球善哉BACK NUMBER
2番はバントより強攻が最近の流行?
高校野球の潮流は“ビッグイニング”。
posted2017/08/21 11:50
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
こんな準々決勝を見た記憶がない。
4試合すべてで試合終盤までに大差がついていた。2試合目の天理vs.明豊の試合だけは、明豊が最終回に追いすがったが、これほど勝者が圧倒するばかりの準々決勝というのは覚えがない。
“打高投低”の今大会を象徴しているともいえるが、一方で各チームの打線のつくり方に変化が生まれているのを見逃せない。
それは「攻撃的2番」を採用しているチームが多いところだ。準決勝進出チームでは、広陵を除く3校が2番に好打者を置いている。小技に長けた「つなぎの2番」から「攻撃的2番」という潮流が、試合序盤における大量得点を引き出している。
「1番の田中(幹也)が出塁できなかったときに、チャンスメークするのが自分の仕事だと思っています。きょうは田中がノーヒットだったので、自分がチャンスメークできたのは大きい。相手投手のコントロールがいいと聞いていた中で、浮いてきたボールを一発で仕留めることができた。ホームランになってよかったです」
そう語るのは東海大菅生の松井惇だ。三本松(香川)との準々決勝、松井はホームランを含む3安打2打点2得点をマーク。三塁打を打てばサイクル安打達成という獅子奮迅の活躍を見せた。打線の火付け役として「2番・松井」の存在は大きい。
バントの2番より、打ってくる選手の方が相手は嫌。
「監督からは1番の田中が一塁に出塁しても『2番の仕事』ではなく、『自分のバッティングをしろ』といつも言われています。バントをすることもあるんですけど、攻撃的2番にやりがいを感じています」と語る。
トーナメント戦では1球で流れが変わることが多く、1番打者が出塁すれば犠打で走者を進めるという作戦が主流になっている。しかし、東海大菅生はそうした「決まりきった」作戦をとることが少ない。
攻撃的2番を組む意図を指揮官の若林弘泰監督はこう語る。
「僕は投手出身で感じていたんですけど、嫌な2番バッターがどんなタイプかっていうと、バントをするタイプじゃないと思っていたんです。打ってくる選手、何をしてくるか分からない選手を置く方が嫌だなということで、そういうタイプを置いています。2番に松井を入れているのは、通常の2番バッターとは違うという考え。松井は3番を打っていた選手なので、攻撃的な2番バッターが打線に入って面白くなった。1番の田中幹也が出塁すれば、スチールやランエンドヒットもある。相手は色々考えてくれるから、攻撃の幅が広がる」
2回戦から準々決勝まで3試合29得点の攻撃力は2番・松井の存在が大きいといえるだろう。