野球のぼせもんBACK NUMBER
日本一直後にビールかけよりサプリ。
ホークス明石健志は天才型名脇役。
posted2017/08/17 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
駐車場へと続くヤフオクドームの選手通路。その日の「陰のヒーロー」がやってきた。だが、取材する記者は筆者以外に誰もいなかった。
8月12日、ホークスは1-0の接戦を制した。お立ち台に上がったのは育成出身史上初の2年連続2桁勝利を決めた千賀滉大と、決勝タイムリーを放ったデスパイネ。だが、両チームで唯一ホームを踏んだ明石健志の活躍も見逃せなかったのだ。
1番打者で出場して4打席のうち3度出塁。1安打と2四球だ。「得点した2打席目もそうだったけど、初回も含めてイニングの先頭が3度もありましたからね」。リードオフマンとしての役割を全うし、してやったりの表情を浮かべてみせた。
ただ、それは心躍る笑顔というより安堵感に溢れていた。
「これでまた生き延びることが出来たかな」
この夏、明石は出場機会を増やしている。セカンドのほか内川聖一の離脱後はファーストを守ることも少なくない。7月21日のマリーンズ戦では決勝タイムリーを放って、この日は1人でヒーローインタビューを受けた。
「僕はレギュラーが確約された立場じゃない。“何か”を起こさないと、明日は出番がなくなっちゃう」
「打撃の柔らかさとミート力は12球団トップクラス」
今年がプロ14年目。'12年に135試合、'15年に115試合に出場した以外はシーズン3桁の試合出場はない。それでもプロの世界で長く飯を食っている。そんな明石についてチームの選手や首脳陣、OB、スタッフの誰もが同じように評する。
アイツは天才だ、と。
その中の1人、藤本博史打撃コーチの弁だ。
「打撃の柔らかさとミート力は12球団トップクラスじゃないかな。それにタイミングの取り方など、とにかく技術がズバ抜けて高い。だから若い頃からエース級のピッチャーをよく打ったやろ。いいピッチャーを打つのは裏付けがないと。偶然じゃ打てないよ」