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宿敵・杉内俊哉の再生を願って。
木佐貫洋、巨人スカウト転身の今。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byWataru Sato
posted2017/04/28 11:30
グローブをはめていた左手にはスピードガン、豪速球を投げた右手にはスコア付けのペン。木佐貫はプロの原石を探すため、球場を渡り歩いている。
通算142勝を挙げた杉内も、リハビリ生活で苦悩。
「甲子園の一歩手前でやられたので、ずっと悔しさがありました。プロで杉内と投げ合う前日は、当時のチームメイトから『リベンジしてくれ』というメールも来た。僕自身が眠れないくらい緊張していたので、返信しませんでしたが……(笑)」
杉内は甲子園に出場すると、八戸工大一高を相手にノーヒットノーラン。一気に全国区の注目を集め、その後“松坂世代”をリードする存在として活躍を続けた。
だが、プロ通算142勝を積み重ねた左腕も、昨季は登板0に終わった。杉内は、'15年に右股関節の手術を受け、長いリハビリ生活を送っていた。
杉内は、今回の取材で、回復途上の悩みをこう語っている。
「アスリートにとっては前例のない手術でした。肘の手術だったら、リハビリのメニューなどがしっかり決まっていると思うんですが、僕の場合は何をすればいいかがわからない。常に、『もっといい方法があるんじゃないか』と悩んでしまうんです」
「まだやれる、まだやれると言い聞かせている」(杉内)
決まったメニューは存在しないため、自分なりの方法を考え、実践した。その結果、医師からは「もう、よく走れるね」と驚かれるほどの回復を見せた。
「今は、いい時の8割くらいまで回復している実感があります」
4月10日にはイースタンリーグ楽天戦の先発のマウンドに上がり、5回を投げ6安打3失点。98球を投げて最速138kmを計測し、6つの三振を奪った。
「まだやれる、まだやれると僕は自分に言い聞かせているし、実際にそう思っています」
杉内は近い復活を見据えて、明るい表情を見せた。
そして──。
甲子園をかけた因縁の対決から19年。奇しくも、二人は今同じ球団に所属している。