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努力したと決して自分では言わない。
西武・栗山巧が積み上げた1500試合。
posted2017/04/18 11:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
今年、プロ入り16年目を迎える西武の栗山巧が、4月7日のソフトバンク戦でプロ史上187人目となる1500試合出場を達成した。
栗山は'02年にドラフト4巡目で兵庫・育英高校から西武に入団した。2年生の春と夏、一度ずつの甲子園出場経験はあったものの、同じ年のドラフトには寺原隼人(日南学園-ダイエー-ソフトバンク)や真田裕貴(姫路工業-巨人)など甲子園を沸かせたスターがいて、彼らの上位指名の陰に隠れ、さほど大きな話題にはならなかった。
しかし西武に入団したあとは着実にファームで実績を残し、'04年、プロ入り3年目にして早くも一軍デビューを飾る。プロ初出場は9月24日の大阪ドーム(現・京セラドーム)での近鉄戦だった。初ヒットもその近鉄戦である。7回に、最多勝を獲得したことのある小池秀郎から放ったヒットが記念すべき1本目で、昨シーズンには、史上120人目となる1500安打もすでに記録している。
同期の中村剛也のように、ど派手なホームランで観客を沸かせるプレースタイルではない。しかし1本のヒットを打つことに強くこだわり、ストイックに技術を突き詰めてきた。ときには1番打者としてフォアボールを選んででも出塁することにこだわり、また、ときには2番打者としてチームの勝利にこだわった選手である。
「子供たちにとっては、僕はイチロー選手みたいな」
筆者は入団直後から栗山を取材することも多かったのだが、今でも印象に残っている言葉がある。ちょうど一軍での試合出場が徐々に増え始めた'05年頃のことだ。
彼の故郷である兵庫県、神戸市で西武の公式戦が開催された。栗山を応援するために、彼が幼少期に在籍していた少年野球チームの子供たちが、スタジアムを訪れてスタンドで試合を観戦していた。栗山が登場すると、ユニホーム姿の一団は一層、大きな声援を送った。
その姿を見た栗山が試合後、言った。
「僕はまだプロに入って数年の、実績も経験もない無名な選手ですけど、あの子供たちにとっては、僕はイチロー選手みたいな存在だと思うんです。だから、僕は彼らの期待を絶対に裏切るようなことはしてはいけないんですよ」