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FIFAマスターで学ぶ大滝麻未の野望。
「女子サッカーをやり直したい」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2017/02/27 07:00
2012年にはUEFA女子チャンピオンズリーグの優勝も経験した大滝麻未さん。異色のキャリアはどんなドアに繋がっているのだろうか。
アメリカの例に、日本と比べて羨望のため息をつく。
「メジャーリーグがMLBAM(MLB Advanced Media)っていうメディアコンテンツの会社を持ってて、いろんなメディアをうまく使っているというケーススタディだったんです。野球ってサッカーと違って毎日試合がありますよね。テレビが毎日はカバーできないから、そこにチャンスがあったそうなんです。
で、そのBAMの職員の平均年齢が30歳前半で、その人たちがメジャーリーグの上層部の人に、タブレットとか今のメディアの使い方を教えるんですよね。でも、そういう若手の意見を聞いていくのって、日本では難しいだろうなと思って」
確かに、日本の縦社会で、若手が上層部に何かを教えるのはなかなか難しい。
「日本では出る杭は打たれますからね。でもそこが変わらないと、置いてかれるばかりですよ、世界に」
実感を伴ったため息をつく。
「まず正解不正解を気にしちゃう」という弱点。
プレーヤーとしてフランスに滞在しただけでなく、学生時代にカナダへの留学経験もある大滝さんだが、それでも今の環境は非常に刺激的だという。
「授業の雰囲気は日本と全然ちがいますよね。まるで先生との会話みたい。どの先生もわからないことや意見をインタラクティブに聞いてくれるし、学生もどんどん知ってることを伝えていくからまた新しい会話がうまれたり、喧嘩になったりするんですよね。
学生でも、全ての事柄に対して意見を持ってるんです。でも日本人は、私もそうですけど、そんなに何に対しても意見を持ってないのかなと。言葉の問題もあるけど。考える能力も伝える力も低い。それに、まず正解不正解を気にしちゃうから、もっと反射的でも良いのかもしれない。海外に出ると自分の良いところ悪いところがわかります。でも良いところをそのまま持続することはできても、足りないところを改善するのは簡単じゃないですね」
日本では考える機会がなかった問題に遭遇し、多くのことを感じ、考えることを楽しんでいるように見える。
「アイデンティティって言葉がよく出てくるんですよね。日本にいたときって自分と他人との比較でアイデンティティを考えるっていうのはあったけど、日本人としてのアイデンティティを考えたことなかったなって。当たり前だけど、自分が何人かなんて考えたこともなかったし」
日々、彼女の中では新たな世界が広がっているようだ。