マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
白鴎大・中塚駿太の巨大エンジン!
丸顔に負けん気が潜むドラ1候補。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byTakashi Kimura
posted2016/10/10 07:00
中塚駿太の191cmの体格は、持って生まれた才能の1つ。即戦力としてもだが、何よりそのポテンシャルが楽しみだ。
田中正義の150キロを早く見せないほどの球。
「練習のシートバッティングであいつのストレートを見慣れてるから、田中正義の150キロが速く見えませんでした」
白鴎大の主軸を打って、この夏は「日米大学野球選手権大会」で大学日本代表の4番をつとめた大山悠輔が、そんなことを言っていた。
この秋、中塚駿太とともにドラフト上位指名が確実視されている頼もしい同僚だ。実は2人は、茨城・つくば秀英高から7年間、同じ釜のメシを食ってきた。
「光栄です。高校からずっとおととしぐらいまでは“雲の上の人”でしたから。悠輔から認められるようになれたら、それでもう……」
控えめなことをいうヤツ。
「自分、田中正義にだけは絶対負けたくないんで!」
マウンドに立って、投球モーションに入った瞬間も、顔が“仁王”になるわけでもない。そんな退いた感じで、プロ、だいじょうぶかなと思っていたら、黒宮監督が意外な話を聞かせてくれた。
この春先、リーグ戦を前にして、昨季から主戦で安定したピッチングを続けてきたエース・大出翔一(4年・館林高)の調子がなかなか上がってこない。
エースナンバー18番は、果たして大出投手の背中のままでいいのか。投手陣を集めて、黒宮監督がそんな問いかけをした。
「中塚が言うんですよ。18番は大出のままでいいと思います。その代わり、自分の11番も絶対変えないでください。自分、田中正義にだけは絶対負けたくないんで! って。あいつの中に、いつの間にあんな激しいものが生まれたんだろ……って、ビックリしましたよ」
9月17日。
やはりドラフト候補左腕・笠原祥太郎(新潟・新津高)を擁した新潟医療福祉大と、先発投手として投げ合った中塚駿太。
いつものように涼しい顔で150キロ台をマークしながら、140キロを超える高速フォークを駆使して3安打に抑え、8三振を奪って完封にねじ伏せた。
「笠原には絶対負けたくなかった。笠原より先に絶対マウンドを降りない。そればっかり考えて投げました」
ただデカイだけだった男が、その心の芯に赤い炎をたぎらせる男になってこの秋、ドラフトを迎える。