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DeNA須田幸太が夏場もバテない理由。
「究極の便利屋」が蓄積した“貯金”。
posted2016/08/24 11:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
NIKKAN SPORTS
真っ直ぐがここまで全然衰えていないように見えるけど、そのへんの自分での手応えって――?
ある記者が、DeNAのセットアッパー須田幸太にそう問いかけたのは8月13日、広島カープに競り勝った試合後のことだった。同点の延長10回に登板した須田はわずか10球で3つのアウトを重ね、その裏のサヨナラ勝ちで今季4勝目の白星を手にしたところだった。
筆者は自分の取材ノートに目を落としながら、聞き耳を立てた。ノートに用意していた第一の質問は、「夏場に入っても、ストレートのキレが全く落ちてないように見える。自分の感触はどうか」。他人の口から発せられた言葉とのあまりの一致に、ちょっとばかりびっくりしたのだ。
さらに須田がその問いに答え終わった後で駆けつけてきた別の記者が、こう訊いた。
「ここにきて真っ直ぐのキレが増してるような気がするんですけど、投げててどうですか?」
須田は「それは(先にいた記者に)聞いといてください」と苦笑したが、見る者の多くに共通した印象を植え付けるほど、この夏の須田の好調さは際立っているということだろう。
勝ち継投4人のうち最年長だし、俺がやらなきゃと。
2010年のドラフト1位、プロ6年目の30歳は冒頭の問いにこう答えていた。
「自分の体の状態はあんまり変わってないんですけど、気持ち的な部分ですね。セットアッパーと抑えが打たれているので、俺がやらなきゃなっていう気持ちが強くなった。勝ち継投4人(須田、田中健二朗、三上朋也、山崎康晃)の中で最年長ですし、そういう気持ちが今はすごく強くなってると思います」
プロ入り後の須田は、多彩な役回りを任されてきた。当初は先発で起用されたが、4年目にはロングリリーフもできる中継ぎとして重宝され、昨季は抑えも経験した。今では、チーム事情に合わせてどんな役割でも全うするため「究極の便利屋」と自身を称するほど。今季は主にリードの場面で、8回の三上、9回の山崎につなぐ“方程式”の一角として重責を果たしてきた。