リオ五輪PRESSBACK NUMBER
内村「1人1人紹介してもいいですか?」
体操団体金メダル、“最強の5人”。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA
posted2016/08/09 16:00
アテネでの「栄光の架け橋」から12年、リオの地で男子体操団体の5人はそれぞれの責務を全うしてヒーローとなった。
あん馬、つり輪で我慢もライバルがまさかの低得点。
「五輪には魔物がいた」
内村が力なくつぶやいたロンドン五輪から4年。美しい体操で世界を制することを目指して日々の努力を重ねてきた体操ニッポンがリオで見せたのは、美しさだけではなかった。逆境を撥ねのけるたくましさがあった。
予選4位と出遅れた日本の決勝での最初の種目は、スペシャリストでも「最初にやるのはイヤ」というくらい緊張する種目であるうえに、今回のメンバー構成では日本の弱点であるあん馬だった。
だが、日本は2番手の山室が落下して13.900にとどまったものの、1番手の内村が15.100、3番手の加藤が14.933といずれも予選を上回る点を出して山室のミスをカバーし、8チーム中6位でスタートした。
2種目めも苦手のつり輪だったが、どうにか踏ん張った。1番手の田中が、自らの名のついた「タナカ」を美しく決めて審判にアピールすると、内村も安定した演技で追随。この種目を得意とする山室は、力技でこらえ抜いて予選より点を上げた。日本は我慢を強いられる2種目を終えて5位。だが、周りを見回せば、予選1位の中国と予選2位の米国はゆかでミスをして日本より下にいた。
跳馬で白井、平行棒で田中が勢いを加速させた。
逆風が追い風に変わり始めたのは、3種目めの跳馬だ。1番手の加藤が「ロペス」をうまくまとめて15.000を出すと、続く内村も大技の「リ・シャオペン」を力強く成功させて15.566の高得点。
そして、その流れを一気に加速したのが、この種目から登場した白井健三だ。「シライ・キムヒフン」をEスコア9.633という素晴しい出来映えで成功させ、15.633。日本はこれで2位に浮上した。
良い流れを続けたいとのムードの中、4種目めの平行棒では、予選で落下してしまった田中に注目が集まった。田中は、どこか開き直ったような面持ちで1番手に登場。コナミの盟友・山室の名のついたG難度の「ヤマムロ」を美しく成功させ、15.900の高得点を出した。加藤と内村も15点台をそろえた。