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ロシア陸上界が五輪不出場なら……。
ドーピング禍の決着は6月17日に。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/06/12 08:00
ロシアのスポーツ相ムトコ氏には、ドーピングのもみ消し疑惑もかかっている。
陸上以外にも、ロシア以外にも大勢いる。
資格停止が解けなければ、ロシアは陸上競技で、リオ大会に参加できなくなる。それはアメリカや日本などがボイコットした1980年のモスクワ五輪、ソ連など東側諸国が不参加だった1984年のロサンゼルス五輪に相当する衝撃かもしれない。ロシアは陸上の強豪の1つであり、その選手たちが不在である光景を想像してみれば、そのインパクトは決して小さくない。そして不在である事実は、大会中も常に意識につきまとうかもしれない。
ただ、ことはロシア陸上界に限った話ではない。ロシアの他競技でも再検査により次々にドーピングが発覚しているし、ロシア以外の国々でも多数の選手の名前があがっている。リオデジャネイロ五輪に参加できなくなった選手は、あまりにも多い。
検査の精度があがれば、ドーピングの手法も向上する。たびたび違反が発覚しても、いたちごっこが続いてきた。その都度問題がクローズアップされ、対策が講じられても、状況が好転してきたとはいえない歴史がある。
北京五輪の男子4×100で日本が銀に繰り上げ?
それでもロシア陸上界の、いやロシアの国家的な疑惑が伝えられ、各国の選手の違反が次々に発覚する現在は、ドーピング問題のターニングポイントとなるのかもしれない。なによりも、ロシア問題のインパクトの大きさゆえにだ。
フェアに、まっとうに争われるはずのスポーツで、のちになって記録が取り消され、順位が変わる状態は、スポーツそのものの危機でもある。2008年の北京五輪男子4×100mリレーで金メダルを獲得したジャマイカの第一走者、ネスタ・カーターが再検査で陽性反応を示したことが6月3日に伝えられた。銅メダルだった日本が繰り上げの銀メダルとなる可能性もあるが、日本人としてもこれでは素直に喜べないだろう。
だからこそ、このタイミングをターニングポイントとして、改善に向けて歩み出さなければならない。