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オシムが語る、昇格を逃したジェフ。
「希望は常に抱き続けるべきだ」
posted2015/01/07 16:30
text by
イビチャ・オシムIvica Osim
photograph by
Sports Graphic Number
メルマガ「イビチャ・オシムの『オシム問答』」。
最新号の中身をちょっとだけ……特別にご紹介いたします!
▼Lesson.89 目次
【1】 〈今週の「オシム問答」〉
「ガンバの三冠は、他クラブにとってもいい見本になる」
【2】 〈オシムとの対話〉
「Jリーグ全体のレベルは少しづつ良くなっているはずだ」
【3】 〈バドゥ・ビエイラ・ジョホールバルを語る/最終回〉
「日本サッカーの発展にとっての問題は、地理的なものだ」
【4】 〈オシムの教え〉
「私の理念は、満員のスタンドが、試合と選手に満足することだ」
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【2】 〈オシムとの対話〉
「Jリーグ全体のレベルは少しづつ良くなっているはずだ」
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オシム:「ガンバがすべてのタイトルを独占した」と妻が言っているが。
――今日は山形を3対1で破り、天皇杯に優勝しました。
オシム:まあ順当な結果と言えるだろう。
――山形もいいチームなのですが、選手個々のレベルに違いがあって……。
オシム:ガンバの方が強いのは仕方がないことだ。経験も豊富で大舞台での場数が違う。今がどんなチーム構成になっているかはよくわからないが、日本で最も優れた選手たちがプレーしているのは間違いないだろう。
――その通りで、2トップのひとりはブラジル人(パトリック)で、もうひとりが宇佐美という若いストライカーです。どちらも個の能力がとても高いです。
オシム:遠藤はずっとプレーしているのだろう。
――そうです。中盤の底で今野とともにゲームを支配しています。
オシム:遠藤、今野、二川……。
――二川はまだ残っていますが、今日はプレーしませんでした。
オシム:ずっとプレーし続けるのはいいことだ。
――ただ、私の印象ですが、あなたがジェフを指導していた時期のガンバの方が、今日のガンバよりも良かったように思います。コレクティビティやボールの動かし方など……。
オシム:フィジカルや戦術も西野の時代のほうが良かったわけだ。選手のポテンシャルも経験も当時の方が上回っていたということか。
ジェフは、もっと良くなるという希望は常に抱き続けるべきだ。
――たしかにガンバの三冠は見事という他ありませんが、Jリーグ自体のレベルがそれほどいいとは言えません。
オシム:だんだん難しくなっているのだろう。サッカーはどんどん進化しているうえに、選手が国外に流出しているのだから。それでもJリーグ全体のレベルは少しづつ良くなっているはずだ。
――私もそうは願っていますが。
オシム:未来にとって大事なことだ。日本の選手たちはヨーロッパのクラブで多くのことを学んでいる。そこには進歩しかない。
――それはポジティブな側面です。それで残念なのは、ジェフが今年もJ1昇格プレーオフで敗れてしまったことです。
オシム:それはもうわかっている。明らかなのは、クラブが方向を誤ったことだ。然るべきことを然るべきときにやらないと、そのツケを必ず払わされる。人生でもそうだろう。愚かな間違いを犯したら、その対価を支払わねばならない。
――プレーオフでは、山形が勝利に値しました。
オシム:それならば仕方がない。何も言うことはない。
――モチベーションもフィジカルも、山形がジェフを上回っていましたから。石崎監督はいい仕事をしたと思います。
オシム:誰だ?
――石崎です。以前は札幌や新潟の監督をしていました。
オシム:もちろん監督の力は大きい。監督の力量は認めねばならない。監督がチームのコンセプトを作り、さまざまなアイディアをもたらすのだから。
しかしジェフも、来年はさらに良くなるだろう。もっと良くなるという希望は常に抱き続けるべきだ。
もちろん、ガンバには祝福の言葉を送って欲しい。3つのタイトルをすべて獲得するのは容易なことではない。完全な支配と言っていい。
――まさか今年のガンバがそれをやってのけるとは、思ってもいませんでした。
オシム:彼らはひとつの模範になるだろう。どんな風に仕事をすればいいのか。クラブのマネジメントや練習のアプローチ、チームの構築などにおいて。ガンバから学ぶべきことが多いのは間違いない。彼らが勝ったのは決して偶然ではない。そうなって然るべきことを実行してきたからだ。
それはまた、他のチームも同じことができるのを示したわけで、日本にはまだまだ進歩の余地がある。他のクラブにとっては、素晴らしい見本であるといえる。とりわけ浦和など、より資金力のあるクラブにとってそうだ。小さなクラブは、ガンバのように必要な選手が買えるわけではない。しかし金持ちクラブにはそれができる。
くれぐれもおめでとうと言ってくれ。メルシー。