スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
異才の復活と新星の飛躍。
~ブルワーズ好調の理由と不安~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2014/05/10 10:40
一昨年はわずか3セーヴ、昨年も10セーヴにとどまったKロッドが甦り、チームを牽引する。
開幕して約1カ月、2014年の大リーグがなかなか渋い展開を見せている。5月4日現在、6割以上の勝率で走っているのが、ブルワーズ、タイガース、ジャイアンツ、アスレティックスの4チームなのだ。
とりわけ眼を惹くのはブルワーズだろう。先のことはまだわからないが、他の3チームは開幕前から評価が高かった。私も、タイガースとアスレティックスを地区優勝の本命に挙げ、ジャイアンツをワイルドカード有力と予想した。
ただ、ブルワーズは無印だった。薬物禍のライアン・ブラウンが戦線復帰しても、他の戦力がいまひとつなのだ。カルロス・ゴメスやジーン・セグラは打席での辛抱が足りないし、ヨバーニ・ガヤルドやカイル・ローシュの先発陣にせよ、大きな上がり目を期待するのはむずかしいと思っていたからだ。
ところが、見落としがあった。抑えの切り札フランシスコ・ロドリゲス(Kロッド)と25歳の新鋭右腕ウィリー・ペラルタが、予想を上回る活躍を見せているではないか。
17登板、17イニングス無失点、Kロッドの復活。
Kロッドの実績は、だれもが知っているはずだ。出身はヴェネズエラ。エンジェルス時代の'05年から'08年にかけては、球界を代表するクローザーだった。綽名からもわかるとおり、三振奪取率は抜群。左足を高々と上げて投げ込むモーションは迫力満点で、タラコを思わせる分厚い唇と相まって、異才と呼ぶにふさわしい存在だった。'08年には、年間62セーヴの史上最多記録も達成している。
ただここ数年は、暴行事件や怪我がたたって鳴かず飛ばずだった。愛人の父親に自身の母親を侮辱され、逆上して殴りかかったあげくに右手を痛めた事件などはどう考えても情けない。'11年から'13年までの3年間は3球団(メッツ→ブルワーズ→オリオールズ)を転々とし、成績もぱっとしなかった。
それが今季、しばらくぶりで戻ったブルワーズで、32歳のKロッドは蘇った。チェンジアップの使い方が巧くなり、17試合に登板して17イニングス無失点、14セーヴ。潜在能力が高く、老け込むには早いだけに、モチヴェーションさえ保てれば、あっと驚く数字を残すことが期待できそうだ。