セレッソ時代、クルピ監督から言われていた課題。

　その象徴的なシーンがあった。

　ヨルダン戦、前半4分、清武は香川とのワンツーで相手DF2人を置き去りにして、GKと1対1になった。角度的に十分にシュートを打てたし、打つべきだったが、中央にいた香川にパスして、最初の好機を逸したのである。

「あの時は、GKも前に出て来ていたし、中央に真司クンがいて、前向きでフリーだったんで、よりゴールの確実性を求めてパス出したんですけど……。自分で打てたって言えば打てたけど、その時の判断に間違いはないと思っています。でも、その他のシーンでシュートを打てていないし、打っても決めきれない。それは、セレッソでクルピにも言われていたし、今の自分の大きな課題っすね」

　セレッソ大阪時代、クルピ監督からは「香川は数字を残す選手。おまえは、まだそれが足りない。数字を残せ」と、よく言われていたという。香川と清武の最大の違いは、ゴール数ということだ。以来、清武は、そのことを胸に刻んでプレーしているのだが、試合になるとパスを選択してしまう。

冷静に周囲を見られるがゆえに確実なパスを選択してしまう。

　だがそれは、ある意味、清武の能力の高さを示唆しているものでもある。香川は常にシュートを第1選択肢にしているが、清武は間を作り、冷静に周囲を見られるので、いろんな選択肢を持つ事が出来る。そのため、確実に点を取るプレーを選択してしまうのだ。

「そうなんすよ。でも、それが良くない。真司クンのように貪欲にいかないと点は取れないですし、点を取らないと自分は代表で生き残っていけないと思うんです。だから、俺、決めたんです。ブンデスリーガは残り1カ月半しかないですけど、シュートを打つことにこだわっていこうと。シュートを打っても誰も文句は言わないだろうし、言われても気にせず、とにかくゴールを狙っていこうと思っています」

　ヨルダン戦明けの3月31日、ブンデスリーガ第27節のヴォルフスブルク戦。果たして清武は、決意したように積極的に自らシュートを放ち、ゴールを決めることができたのか――。

【次ページ】　ブンデスで見せたヨルダン戦の再現のようなシーン。