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「20年に1人の逸材」のはずが……。
西武・雄星、1年目の挫折の意味。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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posted2010/07/12 13:00

「20年に1人の逸材」のはずが……。西武・雄星、1年目の挫折の意味。<Number Web> photograph by KYODO

「今のままでも即、通用する」という言葉の落とし穴。

 雄星のつまずきは、ひとつのことを物語っている。

 プロのスカウトが、高校生に対し、最大の賛辞としてよく使う言葉がある。

「今のままでも即、プロで通用する」

 雄星も何度となくそう言われたものだ。だが、その「今のまま」の力を数段上のステージでも同じように出すことがいかに難しいか。

 それは、どこか自転車に乗れるようになるまでの過程に似ている。

 誰もがこんな経験があるのではないか。まだ自転車に乗れない頃、親が「押さえてるから大丈夫だよ」と言い、それを信じているときはうまく乗れていたのに、そう言いながらも実際は手を放していることに気づいた途端、バランスを崩してしまう。

 投手でも同じことが言える。高校時代、少々甘いところにいこうがまず打たれることはあるまいと思って投げていたのと、プロで少しでも甘いところに入ったら打たれるかもしれないとビクビクしながら投げるのとでは、自ずとフォームも変わってくるし、球の勢いも違ってきてしまう。自転車と同じように、自信満々のとき、つまり前者の方がいいパフォーマンスを発揮できることは言うまでもない。

ドラフト1位でも、1年目は活躍できないその理由とは?

 ただ、だからといって、雄星の現状を悲観することはまったくない。田中と同年代で、現在、広島で大活躍している前田健太も、1年目は一軍登板はなかった。西武の涌井秀章も、わずか1勝に終わっている。実際には、たとえドラフト1位であっても、いきなり手を放され、1年目から高校時代と同じようにスイスイと自転車をこげるものではない。

 普通に投げることさえできれば、相手がプロとはいえ、そう簡単に打たれるものではない――。それを頭ではなく、体が信じられるようになるまで。

 たとえどんなにすごいボールを持っているルーキーであっても、その境地にたどり着くまでがけっこう時間がかかるものなのだ。それは雄星とて、例外ではなかったということだけなのだろう。

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