リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
首位バルサに肉薄するアトレティコ。
シメオネは2強体制に風穴を開けるか。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byNobuyuki Yokoi
posted2012/10/19 10:30
ビセンテ・カルデロン近くのグッズショップ。監督のシメオネ、エースのファルカオのほか、アトレティコ育ちの“元エース”、フェルナンド・トーレスのマフラーも並ぶ。
「相手に考える時間を与えない」中盤のプレッシャー。
もちろんそれだけではない。テクニカルな手腕も昨季以上に冴えている。
シメオネのサッカーは守備が基盤であり、11人が同調してコンパクトな陣形を保つ。そうしておいて中盤で強烈なプレッシャーをかけ、相手の動きを読んでボールを奪う。
「こっちが小さくまとまっていると、相手はピッチの中央で自由にボールを動かせなくなる。ライン間のスペースが減り、プレイの選択肢が減ってしまうだけでなく、そのわずかな選択肢をこちらの中盤が予測するからだ。全体をコンパクトにして、フォワードたちがしっかりプレッシャーをかけると、敵の出方が読みやすくなる」
こう語るチアゴによると、練習において選手は「相手に考える時間を与えないこと」を徹底させられるが、これはシメオネ自身が「現役時代はチームの組織的な守備をバックに、中盤で非常にアグレッシブに敵を追うファイター」だったからだという。
驚異的な得点力を誇るファルカオがチームを波に乗せる。
一方で、ボールポゼッションにはこだわらず、今季これまでの公式戦10試合で、敵を上回るボール支配率を記録したのは3試合しかない。それなのにリーガではバルサに1点差と迫る18得点を記録している。
こちらはグアルディオラが「ペナルティエリア内では世界最高のフォワード」と称したファルカオのおかげだ。
現チームの攻撃力とプレイスタイルを考えると、ファルカオのパフォーマンスは驚異的である。
リーガ初年度の昨季いきなり24得点した彼は、今季に入っても8月末のUEFAスーパーカップではハットトリックを達成し、リーガではすでに8ゴールを決め、メッシやクリスティアーノ・ロナウドと並んで得点ランキング首位に立っている。
実際のところ、ファルカオがいなかったらアトレティコがこれほどの勢いに乗ることも、監督シメオネの勝率がクラブ史上最高の68.2%に達することもなかっただろう。