濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
パンクラスとKrushの全面戦争勃発!
時代錯誤の異種格闘技戦の思惑は?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2012/08/13 10:30
8月8日、都内で提携を発表した、宮田充・Krushプロデューサー(写真左)と酒井正和・パンクラス代表。今回の提携に両者は自信をみなぎらせ、エース級の選手の対戦を匂わせた。
8月8日の記者会見で、総合格闘技の老舗団体パンクラスと立ち技イベントKrushの提携が発表された。
パンクラスは、6月に株式会社スマッシュ(以前は同名のプロレス団体も運営)による新体制に移行し、その“仕掛け”が注目されていたところ。Krushは月一回以上のペースで興行を開催、立ち技格闘技で最も勢いのあるイベントとして知られる。
今後、Krushの選手の中から総合格闘技参戦を希望する選手が『TEAM Krush』としてパンクラスに乗り込み、パンクラスルールで闘うことになるという。担当マネジャーはKrush興行部長であり、かつて総合格闘家だった坂本光広氏。
元UFCヘビー級王者、モーリス・スミスをヘッドコートとして招聘。
ヘッドコーチにはアメリカのモーリス・スミスが就任し、来日時に指導する。
スミスは'80年代のキック界を席巻した名選手であり、のちにUFCヘビー級タイトルも獲得。“打撃系総合ファイター”の先駆者といえる存在だ。Krushの前身である全日本キックボクシング連盟にたびたび出場、パンクラスにも参戦経験があるだけに、まさに適任だろう。
具体的な出場選手、マッチメイクは発表されなかったものの、坂本マネジャーは「目標はパンクラスのベルトを獲ること」と意気軒昂。宮田充Krushプロデューサーも「うちの試合はとにかく激しい。パンクラスさんの風景を変えることになると思います」と自信を隠さなかった。パンクラスの酒井正和代表は、Krushから打撃のスペシャリストを参戦させることで「選手のレベルアップにつなげたい」とコメントしている。
疑問が残る、Krushの総合格闘技への参戦。
この提携が時代に即したものなのかというと、正直なところ疑問符がつく。
立ち技はもちろん、総合格闘技も高度な専門性が求められる世界。“異種格闘技戦”は過去の話だ。
とはいえ、格闘技には「○○と△△が闘ったらどっちが強いのか」という永遠のロマンもある。ファンは競技としての“筋”よりも“面白そうなこと”にお金を払うもの。
パンクラス・酒井代表が語ったように、この提携の最大の目的は「業界に風穴を開ける」ことだ。ファンに話題を提供し、少しでも熱を高めるために「あくまで立ち技が本分」と言う宮田プロデューサーもパンクラス参戦を決意した。「格闘技界を盛り上げるのは我々の使命」とも酒井代表は言う。
実際、パンクラスとKrushの提携は反響が大きい。
単純に考えて、パンクラスファンとKrushファンの両方が注目することで、ニュースバリューは単独イベントの倍になるわけだ。パンクラスファンがKrushに、Krushのファンがパンクラスに興味を持つきっかけにもなる。