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“死のグループ”で3戦全勝!!
ユーロでドイツが好調な3つの理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/06/20 10:30
「大舞台に弱い」と言われ続けたマリオ・ゴメスがユーロで覚醒。因縁のライバルであるオランダ戦では2ゴールを決めた。
当初は批判されていた、ゴメスの自己中心的な動き。
だが、初戦のポルトガル戦では、ドイツ公共放送ARDで解説を務めたバイエルンとドイツ代表の先輩であるショルが、ゴメスの自己中心的な動きを公然と批判した。
「FWがもっとアクションを起こせば、多くのチャンスを作れるのだが、ゴメスにはそれがわかっていない」
この指摘は正しい。
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縦横無尽に動いて味方のためにチャンスメイクをするクローゼに比べ、ゴメスは中央にとどまり、相手DFラインとの駆け引きをするばかり。それゆえに、2年前のW杯や、今大会の予選で見られたような前線の流動性は失われている。その犠牲となっているのが、4-2-3-1のフォーメーションで、2列目に並ぶエジル、ミュラー、ポドルスキというMFたちだ。ゴメスが中央に居座り続けるために彼らのゴールへ絡む動きは極端に少なくなっている。
ただ、そこには改善の兆しが見られる。ミュラーはこう語っている。
「確かに初戦はひどかった。でも、オランダ戦では少しずつ改善され、デンマーク戦ではさらに良くなった。僕たちはこれからさらに攻撃的にプレーできるようになるはずだ」
前線の流動性が改善していき、攻撃的なプレーが急増!
ミュラーの言葉通り、試合を重ねるごとに、1トップにゴメスが入った際の動き方が少しずつスムーズになっている。デンマーク戦ではボランチのケディラが左サイドに出て行き、代わりにポドルスキが中に入っていくシーンなども見ることができた。
そして、ゴメスのスタメン起用の最大の効用は、流れを変える戦い方をチームにもたらしたことだろう。
'08年のユーロや'10年のW杯では、攻撃の流れを変えるオプションをドイツは持っていなかった。そのため、相手にリードされてしまうと、打つ手がなく時間を浪費することが多かったのだ。
だが、今は違う。
攻撃が手詰まりになった場合、クローゼをゴメスに代えて投入することで、前線は一気に流動性が増していく。
オランダ戦でも、デンマーク戦でも、試合途中からクローゼが入ると前線が活性化された。デンマーク戦の決勝ゴールにつながるカウンターの場面、最前線にいたエジルは、クローゼが右SBのL・ベンダーと並んで右サイドを走り出すのを見て、右サイドのスペースに飛び出すのをやめ、中央やや左よりにコースを変えた。そこでボールを受けてペナルティエリア手前までボールを運ぶと、空けておいた右サイドのスペースへラストパス。クローゼが潰れ役となり、後方からフリーで入ってきたL・ベンダーが決勝ゴールを流し込んだ。