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<陸上競技の巻> 東京五輪から東京マラソンまで。これが日本が誇るセイコーの時計だ!
text by
秦野邦彦Kunihiko Shinno
photograph bySports Graphic Number
posted2012/03/20 08:00
今回は時代をさかのぼって、日本が世界に誇る名品を紹介!
「東京オリンピックで初めて公式計時を担当してから48年。
東京マラソンでもお馴染みの、セイコー時計の開発秘話」
の巻。
東京オリンピック開催年を舞台にした映画『ALWAYS 三丁目の夕日'64』が大ヒットを記録する中、今回注目したのは“MADE IN JAPANの技術力”。時を遡ること48年、セイコーは1932年のロサンゼルス大会以来担当していたオメガなどのスイスの時計メーカーに代わって東京大会の公式計時を任された。その挑戦の過程をセイコースポーツライフ株式会社スポーツタイミング部長・梶原弘さん(タイトル写真)にうかがった。
「'59年5月、ミュンヘンのIOC総会にて東京大会の開催が決まると、弊社スタッフは翌年のローマオリンピックを視察しました。この時点で服部時計店(現セイコーホールディングス株式会社)第3代社長・服部正次は東京オリンピックの公式計時に取り組むことを決断しますが、スタッフは皆とまどったそうです。なにしろスポーツの計時はそれまで一切やったことがなかったものですから」
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「国産品のオリンピック」「科学のオリンピック」をテーマに掲げる組織委員会に、産業界も積極的に協力する姿勢を示した。だが、セイコーにとってはゼロからのスタート。しかも期限は3年以内という厳しい条件だった。
五輪の前年、ついに東京五輪の正式計時とすることが決定される。
「'61年、セイコー製造部門3社の開発分担が決まり、第二精工舎が機械的誤差のない競技用ストップウォッチの開発を始めます。いろいろな課題を克服し、翌年8月には量産試作が完了。9月にはベオグラードの国際陸連総会で検定を受け、その場で承認を得ました。ベテランのエキスパートが同じストップウォッチを両手に持って同時にスタートさせ、数秒、数分、1時間後に記録を取りましたが右と左でまったく狂いはなかったそうです」
時を同じくして世界初のクォーツ時計の実用化にも成功。'59年に放送局用として商品化した時点ではロッカーほどもある巨大なものだったが、'62年9月には掛け時計ほどのサイズに小型化した世界初の電池式卓上型クリスタルクロノメーター「QC-951」の試作機が完成する。
「'63年、国際陸連の承認を受けたことを踏まえて正式に公式計時を申し入れると、5月に組織委員会がセイコーを公式計時とすることを決定。IOCの承認を経て7月には当時必要とされた英国のグリニッジ国立物理研究所の検定にストップウォッチが合格。さらに'64年2月にはスイスのニューシャテル天文台が主催するコンクールにクリスタルクロノメーター(ボード型)を出品し、小型水晶時計部門の2位から7位までを独占しました」