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ファン感激のDeNA新ユニフォーム。
ピンストライプに込めた「継承と革新」。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byKYODO
posted2012/02/04 08:01
1月29日に行われた新ユニフォームお披露目会見にて。写真左端の三浦大輔投手が着ているのがピンストライプ柄のホーム・ユニフォーム。そこから右に、巨人から移籍したラミレス、中畑清新監督
伝統を継承した新ユニフォームに「DeNAはわかってる」。
今季の新ユニフォーム。ホーム用は横浜ベイスターズ誕生時から日本一になった1998年を含む「ベイスターズがベイスターズだった頃」の象徴でもある白地にピンストライプ。ビジター用は、これまた横浜大洋時代を彷彿とさせる濃紺地である。
悪くない。というか、かなりいい。
これって絶対にファンが作ったんだろうと思うような、大洋・横浜の伝統を尊重し新しさも兼ね備えたデザインは、「継承と革新」というコンセプトに相応しいものといえる。
しかし、これらは個人の感想であり商品の効能を確約するものではありません。
なので、会場に詰めかけたファンに感想を聞いてみた。
「カッコいい。一番好きだったピンストライプのユニフォームが復活したのも嬉しい。ちっとも似てないのに一瞬石川がタクローに見えて泣きそうになった」(オノデラさん)
「昨年までのものが全部変わっても文句は言えないのに、あえて球団の歴史を引き継いでくれたDeNAさんには気を遣っていただき感謝しています」(スズキさん)
「デザインどうこうよりも前開きかどうか気になっていたので、これなら文句ないです」(名前を聞きそびれたファンの女性その1)
「ベイスターズの選手が着れば全部カッコいい」(その2)
「去年のユニフォームがカッコよかっただけに残念。古くさい感じがする」(タケダさん)
人が変われば思いも変わる。センスやデザインそのものに関しては賛否もあるだろう。だが、筆者がこの新ユニフォームを評価する要素はただひとつ。「DeNAはわかってる」ということだ。
DeNAは数少ない旧来のファンを見捨てなかった……。
人間の心理として、対象の過去をそのまま受け入れるよりも、自分の色に染めたくなるのは自然なことなのかもしれない。野球界でも監督交代の時には新しい選手を起用したがるなんて話もよく聞く。現在の野球界の定説として球団を持つメリットが「親会社の宣伝媒体」である以上、親会社の思いとしては、買った球団の過去の歴史は切り捨て、何もかも新しくイチから歴史を作るべく、自社色に染めたくないわけがない。
それがボロボロの過去を持つベイスターズなら尚更。昨年の観客動員数が12球団最下位で新規客の獲得が至上命令である以上、たとえ数少ない旧ファンを切り捨てても、ドラスティックな改革を行うという選択肢もあったはずだ。
だが、DeNAはそれをしなかった。