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ブンデスの古豪がついに復活!
大津祐樹所属のボルシアMGの改革。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2011/09/02 10:30
2勝1敗1分(4節終了時点)の勝ち点7で5位につけるボルシアMG。4試合で失点3と堅守速攻スタイルで上位を目指す
タッチライン際から指示を出して守備の切り替えを徹底。
さらに、選手たちには攻撃から守備への切り替えを徹底させた。昨季までは、攻撃に人数を割いた上に、切り替えが遅く、ボールを失ってから一気にフィニッシュを許すシーンが少なくなかった。基本的にはしっかりと引いて守備のブロックを作るのだが、相手陣内で相手ボールから始まるスローインのときなど、ボールを奪えればチャンスになるため、高い位置からプレスをかけにいかせる。試合中にタッチライン際まで飛び出して、細かな指示を送る姿はおなじみになった。選手の意識を変えることで、守備の安定感は大きく増した。
また、ファブレが4月に抜擢した19歳のGKテア・シュテーゲンも、見逃せない。今季第3節までのセーブ率は88%でリーグトップ。鋭い反応でシュートを止める。おまけに、彼は左右両足を遜色なく使いこなす。パントキックの際に右足で狙うコースが見つからない場面では、素早く左足を用いて攻撃につなげる。将来のドイツ代表入りも噂される若手GKが、チームに安定感をもたらした。
三角形に布陣した選手がパスをつないで堅守速攻を実現。
安定した守備を下敷きにしたボルシアMGは、攻撃では基本的に堅守速攻を貫いている。攻撃から守備だけではなく、守備から攻撃への切り替えも早い。ボールを奪うと、少ないタッチで、時間をかけずに前線に運ぶように求めている。
攻撃の際に際立つのが、選手の距離感の良さだ。
左サイドバックのダエムが証言する。
「選手間の距離を常に短く保つように言われているんだ。距離が短いことで、選手同士が上手く助けあうことが出来るのさ」
例えば4対1で快勝したヴォルフスブルク戦。際立っていたのは攻撃の際のサポートの良さだった。ボールを持っている選手の近くに、2人がサポートに行き、ピッチ上にはパス回しの基本となる三角形がいくつも出来ていた。興味深かったのはボールが片方のサイド寄りにあるとき、逆サイドには常に1人が配置されていること。基本的には近い距離にいる味方に短いパスを出していくのだが、手詰まりになれば、一気にサイドを変える。短い距離に選手を配置することを基本にしているからこそ、あえて遠くに配された1人の選手の存在が活きた。
ヴォルフスブルク戦でボルシアMGがつないだパスの数は481本に及ぶ。開幕戦で絶賛されたドルトムントがつないだパスより61本も多かった。