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世界一を予感させた決勝前日会見。
なでしこたちが見せた成長の証。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2011/07/20 13:35
7月16日、W杯決勝前日に行われた公式記者会見には、佐々木監督、澤、宮間の3人が出席。佐々木監督は、「このチームを率いてアメリカには5連敗している。もうそろそろ1勝してもいい頃。それを含めても、明日の勝率はかなり高いと思う」と冗談っぽく話し、一度も勝ったことのない“最強”の敵を前に余裕を覗かせていた
大会前から、指揮官やなでしこたちがそろって繰り返した言葉があった。
「今、このメンバーで勝てなかったらいつ勝てる?」
費やしてきた時間、重ねてきた経験、選考の末に最終的に淘汰されての21人だという自信、そのすべてが一人残らず全員にみなぎっていた。
決勝翌日、そう言い続ける理由を尋ねられた澤穂希は、
「うーん。なんでだろう。この子たちとなら勝てると思ったというか、そうとしか思えなかった」
この自信こそが、4位という、その時点での最高成績をおさめた北京五輪当時との大きな違いだ。
北京五輪の準決勝アメリカ戦、日本は2対4で敗れ3位決定戦にまわることとなったのだが、試合後の記者会見でアメリカの女性監督ピア・スンダーゲが披露したパフォーマンスは今でも強烈に記憶に残っている。会見場に現れるやいなや、朗々とアカペラで歌いだしたのだ。曲はボブ・ディランの「The Times They Are A-Changin'」だったのだが、ひとしきり歌い終わったあと、なでしこを褒め始めた。
「なでしこのサッカーは女子サッカーの未来である」
その一連の流れの美しさと、表現力、自信に満ちた姿は衝撃的だった。
北京五輪では3位決定戦に敗れても満足感すら漂わせていた。
一方で、当時のなでしこたちは、勝ち上がって対戦相手が強豪になるにつれ、不安げに戦うようになっていった。だから準決勝でアメリカに、3位決定戦でドイツに敗れたことでどこかほっとしたのだろうか。コメントも今思えばなんだか情けないものに終始した。
「ここまでこられて幸せだった」
と岩清水梓は笑顔さえ見せていたし
「(上位から数えて)アメリカ、ブラジル、ドイツときて日本かよってかんじですよね?」
と宮間あやも負けてなお満足感を漂わせていた。
相手指揮官と日本の選手たちを比べても仕方ないのだが、それでも非常に対照的だった。世界に勝つためには、まだまだ多くの道のりが残されているように感じた。