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がんばれ、日本人選手たち! 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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posted2006/02/27 00:00

がんばれ、日本人選手たち!<Number Web> photograph by AFLO

 今週に入り、投手、捕手に続き野手も合流してメジャーもいよいよ本格的なキャンプに突入した。自分自身も現在フロリダに移り取材を続けている最中だが、未だに野茂投手のユニフォーム姿を見ることができないのが残念でならない。1日も早く野茂投手に球春が訪れることを希望して止まない。

 今年も新たに5人の日本人選手がアメリカに渡ってきた。現時点はマリナーズの城島選手とデビルレイズの森投手の開幕メジャーが確定しているが、他の3人(ドジャース・斉藤投手、メッツ・入来投手、ブルワーズ・小関選手)は、このキャンプがまさに生き残りを賭けた競争の場。日本での実績などかなぐり捨て、必死で調整を続けているはずだ。特に小関選手はマイナーキャンプからのスタートと、即メジャーは不可能と考えていい。

 そんな3選手の状況をみてもわかるが、ここ2、3年メジャー球界における日本人選手の評価が少しずつ変化しているように思う。多少シビアになったというか、冷静に対処するようになったのではないだろうか。

 1995年に野茂投手がセンセーションを巻き起こしてからというもの、日本人選手に対するメジャー球界の関心は一気に高まった。以来、何人もの選手が海を越えてやって来たが、そのすべてが大成功を収めたわけではない。それらの経験、さらに球界全体に広がる緊縮財政もあり(もちろん一部の例外チームもある)、日本での成績だけを鵜呑みにして大型契約を提示する愚をしなくなったと思う。今年に関しても、入来投手の場合はメジャー契約を勝ち取ったものの、その前に行ったポスティングでは入札するチームは現れなかったし、斉藤投手や小関選手はマイナー契約しか結べなかった。

 ただし日本人選手の評価自体が下がったとは思わない。すべての日本人選手が日米の環境変化に対応できるわけではないということをメジャー球界が理解したのだろう。もちろん今後メジャー入りを熱望しているライオンズ・松坂投手やジャイアンツ・上原投手などの一部のスター選手たちは、今まで通りの扱いを受けるだろう。だがその一方で、メジャーを狙う多くの日本人選手にとって“狭き門”になったことも否めない。

 「彼が実力ある選手だというのはわかっている。あとは彼が我々の手助けになるような活躍を期待している」

 日本人選手を受け入れたチームの首脳陣たちは一様に口を揃える。当たり障りのない返答といえばそれまでだが、裏を返せばその選手がメジャーで活躍できるかを確信できていない証拠でもある。その扱い方は、まさに故障明けや1、2年不振が続いたベテラン選手のそれとまったく同じなのだ。

 以前に触れたことがあるが、メジャーはある程度実績を残したベテラン選手たちに実に寛容で、何度でもプレーする機会を与える。昨年のバッファローズ・吉井投手や今年のスワローズ・高津投手のように、テスト生としてキャンプに参加し再入団するケースは、ここメジャーでは日常茶飯事のこと。そういった選手のほとんどが、斉藤投手同様にマイナー契約でメジャー・キャンプに招待選手として参加し、ゼロからのスタートを切っているし、たとえメジャー契約を結べても入来投手のように最低年俸ギリギリの年俸しか受け取ることはできない。

 だが復活さえ果たせれば、以前のような高額契約が待っているのだ。例えば昨オフにタイガースと2年契約1100万ドルで合意したトッド・ジョーンズ投手はその典型の1つだろう。2000年までタイガースで不動のクローザーを務めていたが、翌年シーズン途中でツインズにトレードされてから本来の投球ができず昨年マーリンズで40セーブを挙げるまで7チームを渡り歩いた。その間、2004年にはデビルレイズとマイナー契約し、招待選手としてキャンプに参加していたが開幕直前で解雇されたりもした。しかし最後までプレーできるチームを探し続け、遂に見事な復活を果たしたわけだ。ジョーンズ投手は野茂投手と同じく今年38歳を迎える大ベテラン。もちろん斉藤投手も活躍さえできれば、数年後にはジョーンズ投手のような成功を掴むことができるのだ。

 確かにまったく環境の変わるメジャー挑戦は、日本人選手にとって不安材料が多い。最低限の保証がほしいし、日本での実績を評価してほしい気持ちがあるだろう。だが既述したように、メジャーでの日本人選手の評価は明らかに変わってきている。今後は斉藤投手や小関選手のようにマイナー契約でも臆せず、挑戦する気持ちが大切になってくる。すべては自分次第。自分さえしっかりすれば、日本以上の成功が待っているかもしれない。

 だからこそ2選手には本当に頑張ってほしいと思う。2人の1日も早いメジャー入りを願いながらキャンプ取材を続けていきたい。

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