オリンピックへの道BACK NUMBER
世界陸上の経験をロンドンへ。
ベルリンで踏み出した「小さな一歩」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2009/09/01 11:30
尾崎好美の監督・山下佐知子氏の記録が1991年の世界陸上選手権での銀メダル、'92年のバルセロナ五輪では4位だった
地道な努力が実った尾崎と村上。
個々の日本選手に目を向ければ、やはり、メダルを獲得した尾崎と村上の活躍を称えたい。尾崎はマラソン3回目ながら、所属の第一生命監督、山下佐知子氏の指導のもと、じっくりと地力をつけてきた。「精神的に粘り強い選手」と関係者は評するが、そのとおり、粘り強く練習に励み、26歳になってからマラソンに挑戦した選手。
村上は、10年にわたり、日本のやり投げの第一人者である。オリンピックにはアテネ、北京と2度、世界選手権も2度出場しているが、これまで、決勝に進んだことはなかった。だが、世界での勝負をあきらめることなく体の使い方、鍛え方などを研究。ついに、やり投げでは日本史上初のメダルという快挙を成し遂げたのである。
両者に共通するのは、長期にわたり、視線をしっかり定めながら、地道に努力と工夫を積み重ねていったことだ。彼らの姿も、若い選手たちにとっては、よい手本になる。
世界陸上の経験を、3年後のロンドン五輪への糧に。
最後に繰り返すが、世界でしのぎを削る選手が集う場を知ってこそ、彼らに追いつき、彼らに勝つためには何をすればよいか、深く考える機会になる。
まして今大会は、北京五輪の翌年、ロンドン五輪へと新たなスタートを切ったシーズンだ。ロンドン五輪までまだ3年あるこの時期に知ったということは、選手個々の自覚次第で、きっと大きな糧としていかすことができる。
だから、100m一次予選を突破し、200mでも準決勝進出まであと0.05秒に迫った福島千里のレース後の言葉は印象的だ。
「小さな一歩です」