シーズンも残り３週間を切ったが、ア・リーグ東地区の最下位は、今季もデビルレイズで決まりだろう。９８年の球団創設以来、昨季を除いてずっと最下位の座を独占し続けてきたが、同じフロリダの新設チーム、マーリンズ（９３年創設）が、ワールドシリーズをすでに２回制覇しているのとは、まったく対照的である。

　ア・リーグ東地区にはヤンキース、レッドソックスという強豪（金満）チームがいるため、他の３チームが勝つ可能性は始めから極めて限られている。おまけにデビルレイズは名うての貧乏球団、今季の年俸総額２９７０万ドルは大リーグ最低、ヤンキースの２億８００万ドルの７分の１にすぎない（７分の１の年俸で、今季は、ヤンキース相手に勝ち越したのだから立派だった）。

　デビルレイズのような貧乏球団は、高年俸のＦＡ選手には、始めから契約交渉の相手にもしてもらえない。貧乏球団が金満球団に勝つためには、ＦＡ選手には頼らず、自前で「安い」主力選手を育てる以外に方法はない。選手の年俸が大きく跳ね上がるのは、大リーグ歴３年で年俸調停資格を得るときと、同じく６年でＦＡ資格を得るときの２回だが、貧乏球団を強くしようと思ったら、大リーグ歴６年以内の、年俸の安い選手を主体に頑張る以外に手はないのである。

　実際、ツインズ、インディアンズ、マーリンズ、ベストセラー『マネーボール』で有名になったアスレチクスと、高年俸ＦＡ選手に頼らずに強いチームを作ることに成功しているチームはいくつもあるのだが、デビルレイズの場合はこれまでに打ってきた手がことごとく失敗、最下位が指定席という惨めな状況がチーム創設以来続いている。

　惨めな状況に置かれたときに気持ちがすさむのは常人の性だからしかたがないと言えばそれまでだが、デビルレイズの場合、上はオーナーから下はマイナーの選手まで、気持ちがすさむような話題ばかり聞こえてくるので、その情けなさは貧乏球団の中でも特別際立っている。

　たとえば、オーナーのビンス・ナイモリだが、お金がないことはさておき、人格にもとかくの評判がある。交通違反で警官に車を止められて「いったい、俺を誰だと思っているんだ」と怒鳴ったり、球場のオーナー専用トイレを間違って使った新聞記者を「球場立ち入り禁止」処分にしたりと、情けない話題には事欠かない。

　次に、監督のルー・ピネラだが、０３年のシーズン前に、「自宅のあるタンパに移りたい」とマリナーズの監督を辞めて自分からデビルレイズの押しかけ監督になったくせに、今季は、「チーム強化のために金を使ってくれない球団なんかもういや。辞めたい」と、シーズンの真っ最中にダダをこねた。契約期間はまだ１年残っているが、ピネラが来季復帰するかどうか、ヤンキースのジョー・トーレが解雇された場合の後任監督の最有力候補と目されているだけに去就が注目される。

　また選手だが、デビルレイズに来るベテラン選手は、他のチームが食指を動かさなかった選手がほとんどである。もともと二流の選手か、野茂のように、ピークを過ぎた元一流選手が「最後に一花」咲かせるためのチャンスを求めてやってくる場合が多い。しかし、野茂が、「次の試合に先発させると出来高契約の年俸支払いが増えるから」と解雇されたように、貧乏球団は解雇の仕方までせこいから情けない。

　せこいのはベテラン選手を解雇するやり方だけではない。マイナーの有望選手をメジャーに昇格させる時期についても「せこい」計算をするのでファンに呆れられている。たとえば、今季『ベースボール・アメリカ』誌の「マイナーリーグ・ベスト・プレーヤー」に選出されたデルモン・ヤング（２０歳）、他のチームだったら、９月にベンチ枠が拡大されたときにメジャー昇格を果たしていただろう。ところが、デビルレイズは「今昇格させると金が損」と、昇格を見送った。

　というのも、出場試合数の多い選手は大リーグ歴３年ではなく２年で調停資格を得ることが可能だからである（１年早く調停資格を得る選手は「スーパー２」と呼ばれる）。ヤングを下手に早く昇格させると、安くこき使える期間が１年短くなってしまうので、今季のメジャー昇格を見送ったのである。

　チームのせこい銭勘定のせいで昇格を見送られたのだから、ヤングが怒るのも無理はない。「ＦＡの資格を得たら、絶対他のチームに移ってやる」と息巻いているが、チーム一の有望選手が、メジャーに上がる前から他のチームに移る日が来るのを心待ちにしているのだから、デビルレイズの将来は暗い。