MLB Column from WestBACK NUMBER
野茂英雄が見せる先駆者の矜持
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byYasushi Kikuchi
posted2005/04/22 00:00
遂にメジャーも開幕し、各チーム早くも10試合以上を消化している。ヤンキースなど思わぬ苦戦を強いられているところもあれば、ナショナルズのように予想外に健闘しているチームもある。とはいえ開幕から3週間足らず。いまだ各地区とも混戦模様が続いている。
さてシーズン開幕を飾るこのコラムでは、やはりデビルレイズ・野茂投手を取り上げたいと思う。実は、個人的なことながら今季も野茂投手の取材を担当する幸運によくすることになった。今後も彼の話題をリポートすることができるだろう。
4月9日地元タンパで迎えた今季初登板は、久々に溜飲の下がる投球内容だった。アスレチックスを相手に6回を投げ、本塁打1本のみの1安打1失点。味方の大量得点にも守られ、難なく今季初勝利を飾った。昨年は右肩手術の回復が芳しくなくメジャー10年目で最悪の成績。希望通りドジャースと再契約できず、デビルレイズとマイナー契約。キャンプは招待選手として参加し、開幕メジャー入りを決めたものの、3月29日、最後のオープン戦登板では3本塁打を含む 11安打4失点で降板。報道陣の間には明らかに野茂を不安視する空気が漂っていたが、それを初登板で完全に吹き飛ばしてしまった。
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しかし一転、15日のレッドソックス戦では主砲オルティスに満塁本塁打を許すなど5安打5四球8失点と3回途中で降板した。野茂ファンならずとも、今季の野茂投手の状態が気になるところだろう。
確かに各種報道を見てもわかるとおり、ストライクが入らず四球を繰り返し走者を溜めてから痛打されるという、最悪のパターンではあった。自分もそれら報道の一翼を担った一人ではあるのだが、私感を交えるとかなり違ったものになるのだ。
まず満塁本塁打は、インコース低めの真っ直ぐに腕を畳みながら反応したオルティスを褒めるべきだが、右翼ポール際が極端に浅いフェンウェイパークならでは本塁打。他の球場なら本塁打ではなかっただろう。さらに3回に打たれたレンテリアの3塁打も“グリーン・モンスター”を直撃したもの。他の球場なら外野フライで終わっていたもの。結果はかなり違っていたはずだ。
そして最も肝心なことは、初登板の時と同様に真っ直ぐに球威があったことだ。球速は89マイル(約143km)までしか計測していないが、球自体の力は十分に感じることができた。腕がきちんと振れている分フォークも切れがあり、きちんと空振りがとれていた。昨年の場合だと、腕が思うように振れていなかったため、フォークの軌道を打者に見極められ、不利なカウントから真っ直ぐを狙い打ちされるパターンが多かった。レッドソックス戦の結果だけを見れば、どうしても昨年のネガティブな部分が頭を過ぎってしまうが、その投球内容は昨年とはかなり違っているのだ。
あまり選手やチームの予想をするのは好きではない。だが敢えて今年の野茂投手は活躍を断言したい。ヤンキースやレッドソックスと同じ地区にいるだけに、簡単には勝たせてくれないだろうが、再び野茂投手の痛快な投球を見ることができるだろう。
最後に前回紹介したガララーガ選手は、開幕直前に引退の道を選んだ。残念な結果に終わったが、彼の考えとその挑戦に対する素晴らしさは決して褪せるものではないはずだ。