濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
タイから来た“バカ”が
日本で成し遂げた偉業。
~修斗・世界フライ級王者は35歳~
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2009/12/06 08:00
総合格闘技でタイ人として初となる世界チャンピオンの座に輝いたランバー。「次回からの対戦はすべて防衛戦を希望します」と語った
ジャンルが変わり歳をとっても、強さは変わらなかった。
順調に勝ち星を重ねて迎えた世界戦。ランバーは20代の全盛期と変わらぬ肉体で、圧巻としか言いようのない闘いを見せた。グラウンドに勝機を見出そうとする田原のタックルを切りまくり、ムエタイのテクニックである首相撲を応用して相手の重心をコントロール。テイクダウンされることもあったが、すぐさま足で突き放し、立ち上がってみせる。
スタンドの攻防になれば、そこはランバーの“庭”だ。ローキック、ハイキック、さらにはパンチを面白いようにヒットさせていく。組みつかれることを警戒しているため間合いが遠く、ムエタイとは違って連打を叩き込む場面は少なかったが、見方を変えれば絶妙の距離感だった。
判定はジャッジ1名が3ポイント差、2名が4ポイント差でランバーを支持。もちろん、ランバー自身は採点が読み上げられる前から勝利を確信していた。歓喜のダイブを繰り返す姿は90年代と何も変わっていない。相変わらず“バカみたい”にテンションが高く、相変わらず強い。変わったのは、拳に着けたグローブだけだった。
いや、もう一つだけ変わったことがある。10年前と比べて、少しだけ日本語が上達したのだ。その日の夜、『M16ムエタイスタイル』のブログには“ランバー会長”からのこんな書き込みがあった。
〈こんばんは みんなは元気ですか.今日僕のしあいはかちました.うれしいですわ.みんなは僕におえんにきました.ありがとうございます〉