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闘将・星野が継承した“情”の采配。
「御大」の言葉は奇跡を起こすか? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2011/04/16 08:00

闘将・星野が継承した“情”の采配。「御大」の言葉は奇跡を起こすか?<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

今季8年ぶりの現場復帰を果たした楽天・星野監督。昨年日本一のロッテとの開幕戦で手にした白星は、実に2741日ぶりの勝利だった

「何とかせい!」の念に本塁打で応える嶋の底力。

 その星野監督が就任して初めての開幕を迎える直前、チーム本拠地である仙台が東日本大震災で甚大な被害を受けた。

 4月12日の開幕戦。QVCマリンフィールドのロッテ戦を白星で飾った星野監督は、こう語って息をついた。

「ホッとしているというか、夢を見ているみたいやね」

 この試合の決勝点は7回に選手会長の嶋基宏捕手が放った3ランだった。

 震災発生直後から家族を仙台に残してきて動揺するナインの代表として、球団と何度も善後策の協議をしてきたのは嶋だった。そして被災地救援のために球界が動いた2日の慈善試合では、チームの代表として「見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を」とスピーチ。その後も被災地を慰問して、ようやくこぎつけたこの日の試合。しかし、そこでももう一つの伏線が生まれる。

「僕のミスで1点が入っていたんで、何とか取り返そうという気持ちだった」

 4回に許したロッテの先制点は、本塁上の交錯プレーで、嶋が一度は収めたボールを弾き出されたものだった。

「何とかせい!」

 7回の打席。それまでのナインと嶋の苦闘を知っている。だから、ベンチから星野監督が念じたのは、島岡御大のこの言葉だったはずだ。

 そして打球は、左翼席にわずかに集まるクリムゾンレッドの集団の中に消えていった。

連勝発進にも「欲張りだからまだまだ足りない」と星野監督。

 神がかりかもしれない。

 開幕前の練習試合では打線が全く機能せずに得点力不足に悩んでいた。それがフタを開けてみれば、選手会長の決勝弾で開幕戦を白星発進し、翌日は中日時代からの教え子のベテラン・山崎武司内野手の一発でダメを押しての連勝スタート。

「昨日が嶋で、今日が武司(山崎)か。何かあるね。でも、監督は欲張りだからまだまだ足りない」

 星野監督は笑った。

【次ページ】 星野楽天に流れる“人間力”は非常時に強さを発揮する。

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