野球善哉BACK NUMBER
オリックスのキーマンは背番号「0」。
果敢に盗塁をねらう森山周の快足。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/04/07 10:30
報徳学園高校を卒業する時に、その俊足を見込まれて立命館大学のアメフト部からもスカウトされていたというほどのオリックス森山周。さらに守備では、内野から外野まで守れるユーティリティ・プレイヤーとしての顔も持つ
速い、速い、速い……。
自らの武器を余すところなく発揮するオリックスの背番号「0」を見て、そう呟かずにはいられなかった。
プロ6年目になる森山周である。
3月に行われた対楽天のとあるオープン戦。9番スタメン出場した森山は自らのセールスポイントを懸命にアピールしていた。第1打席は併殺崩れだったが、第2、第3打席は内野安打で出塁していた。
驚くべきは、1打席目を含めた一塁到達タイムがすべて4秒台を切っていたことだ。
通常、俊足と言われるのは一塁到達までのタイムが4.20秒程度、4.10秒を切れば、快速の域だ。だが、森山はそれをも上回るタイムをコンスタントに叩き出していたのだ。ひとつの武器を持った選手がこれほど映えるものなのか……と。森山のスピード感あふれるプレーに、ぐんぐん惹きつけられてしまった。
下位打線からの攻撃の起点となる積極果敢な森山の俊足。
森山の足が驚異的なのは一塁到達タイムだけではない。
この試合で一塁上に残った3度とも、盗塁を仕掛け、成功させているのだ。
何よりも驚愕させられたのがこの3盗塁とも、すべて初球に仕掛けられていることだ。オープン戦だから若干の冒険や失敗も許されるとはいえ、その思いきった盗塁には彼の自信のほどがうかがえた。
後に直接話を聞いたのだが、森山はまっすぐに前を見据えたままこう言い切った。
「他の人より勝てるものが何かと考えた場合、自分の場合、それは足だと思っていますから。今は、盗塁については狙える時に狙っておこうと思っていますので……初球から上手くスタートを切れているのはあります。ただ、シーズンに入れば初球だけではなく、監督の作戦に応じて走れる準備もしておかないと」
森山の出塁と盗塁は、得点機を生む新たなパターンをオリックスにもたらしている。
昨季までのオリックスは坂口が出塁し、後藤やT-岡田ら主軸で返すというケースが多かった。言いかえれば、それしかなかったともいえる。下位打線でじっくりつないでいくということがあまりなく、上位が打てなければ手詰まりとなっていたのだ。