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選手年俸、どう決める?
~涌井とダルビッシュの大きな違い~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byNaoya Sanuki

posted2011/03/04 06:00

選手年俸、どう決める?~涌井とダルビッシュの大きな違い~<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

勝敗の数だけを見ればたしかに大きな差はないが、クオリティスタートなどの指標で比べると、2人の間には歴然とした違いがあることがわかった

 西武の涌井秀章が年俸調停で勝利した。球団側の提示「2億2000万円プラス出来高」に対し、2億7000万円で調停を申請。調停委員会の結論は、15%アップの2億5300万円だった。上げ幅も、3300万円という増額の幅も、日本の年俸調停としては史上最高額。調停委員会の委員長は、元東京地検・特別捜査部部長の熊崎勝彦氏で、そのほか弁護士1人、プロ野球経験者から堀内恒夫氏。この3人による委員会で、今回の結論が出された。

 プロ野球選手の年俸に絶対的な正解は存在しない。球団と本人が受け入れて、それが一つの答えになるだけだ。したがって、涌井の2億5300万円が適正かどうかという議論は、ひとまず置いておこう。

 金額の問題ではなく、今回、委員会から発表された「調停委員会の見解」という一文を読むと、一つ、どうしても首をかしげざるを得ない点がある。年俸額を判断するデータとして、勝敗と防御率にしか言及していないことだ。選手年俸は、どのようなデータに基づいて議論されるべきであるか。この点について、改めて考えてみたい。

 今回の調停にまつわるニュースで、しばしば、ダルビッシュ有(日本ハム)と涌井の年俸比較が報道された。2人はプロ同期生。2人とも2年目から先発に定着して、ダルビッシュが通算75勝32敗、涌井も通算70勝49敗。

●ダルビッシュ有と涌井秀章、2010年の投球成績比較
ダルビッシュ有
(日本ハム) 
項目 涌井秀章
(西武) 
26試合 試合 27試合
12勝 勝利 14勝
8敗 敗戦 8敗
10 完投 6
202回 投球回数 196回1/3
0.22本(1) 被本塁打率 0.96本(14)
9.89個(2) 奪三振率 7.06個(8)
2.41個(6) 四死球率 2.89個(8)
1.78(1) 防御率 3.67(10)
1.015(1) WHIP 1.248(8)
84.0%(2) QS率 59.3%(11)
4.72(3) 三振/四球 2.85(10)
※ WHIP=1イニング当たりに許した走者の数
※ QS=先発して6回以上投げ自責3以下の登板
※ ( )内の数字はパ・リーグで規定回数到達16人の中の順位

 ダルビッシュは昨年の3億3000万円から今年は5億円。涌井への球団提示は2億2000万円の現状維持。この差は大き過ぎるのでは? という論調が主流だった。報道において持ち出されたデータも、ほとんど、ダルビッシュ12勝8敗、防御率1.78、涌井14勝8敗、防御率3.67という数字だけだった。調停委員会の見解にも、こうした報道の論調を踏襲したと思われる部分がある。

 しかし、勝敗の数を比較して、ダルビッシュと涌井の年俸差が大き過ぎると考えるのは、単純すぎる話だ。

【次ページ】 二人をクオリティスタート率で比較してみると……。

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