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「清原和博よりも桑田真澄の方が嫌だった」最強のPL学園に“秋田の雑草軍団”はどう立ち向かったのか? “40年前の金農旋風”のウラ側

posted2024/03/31 06:01

 
「清原和博よりも桑田真澄の方が嫌だった」最強のPL学園に“秋田の雑草軍団”はどう立ち向かったのか? “40年前の金農旋風”のウラ側<Number Web> photograph by AFLO

高校野球界の大スターだった桑田真澄と清原和博。40年前、金足農は「KKコンビ」を擁するPL学園をあと一歩のところまで追い詰めた

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安藤嘉浩

安藤嘉浩Yoshihiro Ando

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2018年、「金農旋風」で甲子園を沸かせた秋田県立金足農業高校。今から40年前の1984年にも、桑田真澄、清原和博を擁するPL学園と激闘を演じた「第一次金農旋風」があった。若き熱血監督に率いられた雑草軍団のドラマに迫った。(全2回の2回目/前編へ)

40年前のセンバツで悲願の甲子園初勝利

 今からちょうど40年前の第56回選抜高校野球大会。甲子園初出場を果たした秋田県立金足農業高校は1回戦で、新潟県立新津高校を7-0で下し、初勝利をあげる。

「なんとか甲子園で校歌を歌うというのが目標だったんで必死でした。同じ初出場で、雪国対決と言われたように環境も似ていたので負けられないという思いでした」

 主将の長谷川寿は振り返る。

 この試合で躍動したのは、エースの水沢博文だった。投げては8回2死までノーヒット・ノーランの快投で、結果的には1安打完封。打っては7回に3点本塁打を放った。

 2回戦の相手は、この大会を制することになる岩倉(東京)。同じ初出場ながら卒業後にプロ入りする右腕・山口重幸(元阪神、ヤクルト)を擁し、前年秋の明治神宮大会を制した好チームだった。

 予想通り水沢との投げ合いになったが、1-1の6回に水沢が3点本塁打を浴びてしまう。それでも、金足農もすぐに2点を返すなど、打ち負けなかった。

 最終的に4-6で敗れたが、この大会で岩倉から最も多く得点したチームとなった。山口は決勝で、PL学園(大阪)を被安打1で完封した好投手。「うちが岩倉から一番点をとったと監督は自慢していた」と記憶する選手もいる。

 実際、3年計画によって体力、精神力を身につけ、試合経験も重ねた選手たちは、初の大舞台で自信をつかんだ。「計画通りでした。夏に向けて私自身も手ごたえをつかみました」と監督の嶋崎久美も語る。

 その言葉通り、春季県大会も金足農は順調に勝ち上がった。ただ、エースの水沢は本調子でなかった。決勝では、ライバルの秋田経法大付(現・明桜)に打ち込まれ、0-7と完敗した。

「偉そうにしてっからだ!」

 嶋崎はエースを烈火のごとく叱った。勝負の夏に向けて、チームにお灸をすえる絶好の機会だと考えたのだろう。さらなる猛練習を課し、チームを引き締めたという。

【次ページ】 あの大魔神・佐々木主浩からホームラン

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