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「自分と戦わなくてよくなった」吉田輝星が明かす確かな手応え…日本ハム→オリックスの首脳陣が密かに練り上げた「覚醒計画」とは 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2024/03/12 11:04

「自分と戦わなくてよくなった」吉田輝星が明かす確かな手応え…日本ハム→オリックスの首脳陣が密かに練り上げた「覚醒計画」とは<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

新天地で再起をかける吉田輝星

「球速が出ている」理由

 今、吉田の表情は明るい。自分と戦わなくてよくなった理由とは。

「いろいろと教えてもらって、すごくシンプルなフォームに近づけられているからというのが一番だと思います。効率的で、今年初めて2イニング投げても疲れない。まだ全力の出力を出し切れない状態ですが、その中でも指にかかっている感覚や、球速的にもいい。去年のキャンプの今頃(2月20日)よりも全然球速が出ています」

 昨年11月の入団会見の際にオリックスの印象を聞かれて、「ピッチャー陣がみんな、球速がすごく速い。『なんなんだ?』って。どの球団でも話題になっていると思います。そこはすごく興味深い」と語っていた。

「腕がすごく走る感覚が…」

 その要因の一つである中垣征一郎巡回ヘッドコーチの指導を吉田も受け始めた。中垣コーチの話を聞き、体重移動やバランスを意識したネットスローなどのドリルに取り組むうち、「腕がすごく走る感覚があった」と言う。

「腰の位置が潰れていないというか。去年と同じぐらいの歩幅でもあまり沈んでいないように見える。体重移動をまっすぐにして、ちゃんと受け止めができるようになって、股関節に、乗りにいくんじゃなく、勝手に乗っているから、スムーズに回転できる。そんなイメージに変わってきて、腕を振るんじゃなく、“走らせる”感覚です。変化球も投げやすくなったし、コントロールも良くなった。球の軌道もちょっと変わってきています。

 以前は、こうしたいなと思った時に、その目標ばかりを見て一喜一憂して、うまくいかない時に考えてこんでしまっていた。中垣さんはたぶんいろんな人を見てきて、この段階ではこういうミスが起きそうだなというのをわかられていると思うので、『力を入れたらこうなる恐れがあるから気をつけろ』とか言ってくれる。そうやって常に見てくれる人がいて、投げすぎないように間隔も気にしてくれる。今は目標に向かってちゃんとステップを踏めている感があります。あとは一番難しい最後のところ。出力が本当に上がってきた時にも自然と同じような状態でできるかというところを、練習していきたいと思います」

厚澤、中垣両コーチのサポート

 2021年まで日本ハムでコーチを務めていたオリックスの厚澤和幸投手コーチが、キャンプ開始早々、吉田と、同じく昨年まで日本ハムに所属していた井口和朋を中垣コーチの元へ連れていき、「とりあえずこの2人、早くやりましょう」と頼んだという。厚澤コーチは言う。

【次ページ】 「いろんなことを期待されすぎて…」

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