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「原君、部がダメになるぞ」原晋監督が今も後悔する“最悪のスカウト”…青学大の信念「心根のいいヤツをとる」はいかに生まれたか?〈箱根駅伝BEST SELECTION〉
text by
原晋Susumu Hara
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/05 17:02
大会新記録で、2年ぶり7度目の総合優勝を果たした青学大の原晋監督(写真は2022年)
問題部員の乱れた生活で…就任3年目の悲劇
その選手が寮に入るや否や、チーム内で抜群のタイムを出す反面、乱れた生活でチーム内をかき回したのです。しかし、実力が抜きんでているだけに、ほかの部員は遠巻きに彼を傍観するだけです。そんなチームが結果を残せるわけがなく、前年よりも成績は落ち込み、陸上部は空中分解の危機に陥ったのです。そして、しばらくしてその部員は辞めてしまいました。
ただ、この3年目があったからこそ、「表現力豊かで、勉強もしっかり取り組める心根のいい選手」という青学陸上競技部のスカウトの基準を確立できたのも事実です。高校生の頃は少々タイムが悪くても、自分でちゃんと考えてコツコツと練習に取り組み、自分の言葉を大切にする子のほうが、大学4年間で圧倒的に伸びるということを知るきっかけになりました。
企業でも抜群の成績を残す一人の営業マンが、その実績を振りかざし「俺はトップの成績を残している。だからなにも言われる筋合いはない」と、組織にまったく融合しなかったらどうなるでしょうか。
最終的に組織がぐちゃぐちゃになるのは目に見えています。そういう自分のことしか考えられない人のことを私は「心根の悪いヤツ」と表現します。それよりも、ほかの人と協調しながら行動できる「心根のいいヤツ」をとるほうが、短期的な伸びは小さくても、長い目で見ると組織全体の力を伸ばすことにつながるのです。