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「やっぱり忘れられへんのよね」人気女子レスラー・安納サオリはなぜ“スターダムの白いベルト”にこだわるのか?「今も悔しさや後悔が…」 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2023/12/27 17:00

「やっぱり忘れられへんのよね」人気女子レスラー・安納サオリはなぜ“スターダムの白いベルト”にこだわるのか?「今も悔しさや後悔が…」<Number Web> photograph by Essei Hara

12月29日にMIRAIが持つ白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)に挑む安納サオリ。人気女子レスラーが激動の1年を振り返った

「やっぱり忘れられへんのよね」

 安納は初挑戦だけれど、もしかしたら戴冠があるかもしれない、と筆者は思った。安納は「MIRAIにファンの支持がない」ことを公言し、「その重い肩の荷を下ろしてやる」とまで言った。

 それは安納の非情さなのか、それとも逆にやさしさなのか。判断は分かれるところだ。

 試合は熱戦だったが、30分の時間切れ引き分けになり、安納のシングル戴冠はならなかった。ただ、この30分間は安納にとって特別なものとなった。スターダムのシングル王座の重みを安納は実感していた。

「しんどい。泣きそうになった。ベルトという結果はついてこなかったけど……」

 安納はそう言った。「しんどいと思ったことはない」と言いながら、それでも「しんどい」と吐露してしまいたくなるほどの重みを安納は感じていた。 

「MIRAIから取りたい。私がMIRAIを支持するわ。そして、いつかそのベルト巻いてやる。そんときまで持ってろ。いろいろ言ったけどさ、私はアンタのこと好きやで」

 安納はMIRAI支持に回った。

「訂正させて。支持なんて二の次よな。MIRAIはめっちゃ魅力的やわ。私が体を張って、胸を張って言える。スターダムの、ワンダー・オブ・スターダムのチャンピオンはすげえレスラーやわ。そのすごいレスラーと30分戦ったことが、いまの私のレベルであって、高みかな」

 11月18日の大阪府立体育会館から12月29日の両国国技館へ2人の物語は続く。だが、「続きではない」と両者とも否定した。それは新しい戦い。そして、過去を超える戦いだ。

「MIRAI、私も延長戦とは思ってない。続きやらへん? って言ったけど、訂正する。あの日を超える戦いをしよう」

 決戦を前に、安納は取材にこう答えた。

「過去があるから今やと思ってるし、基本的に後悔なく前向いて生きてます。あの戦いは、得るものがたくさんありました。でも、やっぱり忘れられへんのよね。今もずっと、あの日の悔しさや後悔が……。勝ちたい。MIRAIに勝ちたい。私が支持したMIRAIから勝って、ワンダー・オブ・スターダムのベルトを巻きたい。今は、これが素直な気持ち。今年スターダムのリングに私がどんな思いで再び上がったのかを思い出して、MIRAIから取りたい」

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