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「駄目だったら、終わり…決断するのが怖かった」プロ5年目で決死のフォーム改造、DeNA知野直人24歳が「必要とされる幸せ」を感じるまで 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/12/18 11:03

「駄目だったら、終わり…決断するのが怖かった」プロ5年目で決死のフォーム改造、DeNA知野直人24歳が「必要とされる幸せ」を感じるまで<Number Web> photograph by JIJI PRESS

現在24歳の知野直人。フォーム改造の決断に踏み切った2023シーズンの歩みを振り返る

 また特筆すべきは、6月期の『スカパー! ファーム月間MVP賞』受賞したことだろう。4月、5月は一軍にいてもバットは振るわなかったが、ファームに行って当たりを取り戻した。6月の成績は、23試合に出場してリーグトップの31安打を放ち、月間打率.323。打点17。一体、何が起こっていたのか。

「いや、この時期だからというわけではなく、オープン戦の途中でファームに落ちてから、自分を変えたんです。もう変化しなきゃいけないって」

フォームを変えて駄目だったら、もうしょうがない

 知野は、この春から“ノーステップ打法”に取り組んでいる。変えた当初は打てなくて当たり前だと割り切って研鑽に努め、ようやく夏前になって形が見えてきたのだという。

「もしフォームを変えて駄目だったら、もうしょうがないといった覚悟だったんですよ」

 シリアスな表情で知野は言った。フォーム改造は野球人生を懸けた一大決心だった。

「プロになって4年間、左腰が逃げちゃう(開く)癖が直らなくて、いい時はいいんですけど、悪い時はとことん悪い。昨年、石井コーチから『ノーステップはどうだ?』みたいな話があったんですけど、最初は頑なに拒んでいたんです。小さい時からやってきた打ち方を変えたくなかったので」

やらないで終わったら、もっと後悔するよ

 押し寄せるジレンマの波。そんな時に思い出したのが、自主トレをともにする宮﨑敏郎の言葉だった。

「やって駄目だったら仕方がないよ。でもやらないで終わったら、もっと後悔するよ」

 飽くなき創意工夫を続け、結果を出してきた最高打者のアドバイス。フォームを変えたくない意志と、それでも打ちたいという歯がゆさ。ついに知野は腹をくくってノーステップに取り組むことにした。ステップという打者にとって何よりも重要なタイミングに関わる部分。相当な覚悟がなければアプローチをすることはできず、下手をすれば、積み上げてきたすべてが瓦解する可能性もある。

決断するのが怖かった

「だいぶ勇気がいりましたね……」

 知野は消え入りそうな細い声で言った。

【次ページ】 昔のことを考えたら、圧倒的に幸せ

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知野直人
横浜DeNAベイスターズ

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