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なぜ「久保建英は“納得いってない”表情」だった? 世界的DFセルヒオ・ラモス攻略も…カメラマンが見た「勝利は最低条件」の自負
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/11/30 11:02
久保建英はセビージャ戦無得点ながら、セルヒオ・ラモス相手にも優勢を築いた
久保は、最初のコンタクトでラモスのフィードに飛び込み、大きな圧をかけることに成功している。
しかしレアル・マドリー、スペイン代表のメンバーとして数々の栄光を手にしてきたCBも慌てることなく、次のコンタクトでは、敢えて久保を懐まで引きつけると、急激なターンでかわすなど熟練の技を見せる。
試合を通して、2人の熱い駆け引きが繰り広げられた。
久保は84分にピッチを後にしているが、その交代間際に久保の執拗なまでの前プレスが2度目のパスカットを成功させている。
ハーフライン付近でボールを奪うと一気に加速、シュートまで持ち込んだ。試合終盤での独走に疲れを隠すことはできず、コースを狙ったシュートに勢いはなくネットを揺らすことはできなかった。ただビハインドの相手が前のめりになる中でのカウンター攻撃は、相手を牽制するのに十分な恐ろしさだったはず。
攻撃面では、久保に軍配が上がったワケ
こと攻撃面では、2人の対決の軍配は久保に上がったと言える。
ボックス内での混戦からラモスの股を抜いてからのシュートは、この日一番の決定機だった。また久保の突破にたまらず身体をぶつけてカード覚悟で止めるシーンもあった。
PSG時代を経て、怪我、重ねた歳の影響もあるか――衰えを感じさせるとはいえ、熟練の世界的CBを相手に、久保はそのクオリティーの高さを示した。
前半22分には、これぞ“ゴラッソ”と思わせるCFウマル・サディクによる超ロングシュートでホームチームがリードを広げた。
昨シーズン序盤の大怪我から復帰を果たしたサディクだが、完全復帰とは言えない状態が続いていた。待望の今季初ゴールにはドミトロビッチも為す術なく、直前にパスを要求していた久保も思わず“お手上げ”といったばかりに万歳をするほどだった。
サディクと久保の連係、という意味では…
ただ序盤には、久保のスルーパスにサディクが走り込んで好機を作りかけたシーンもあったが、2人の連係で攻め入るという場面はほとんど撮影できなかった。
久保の動き出しを囮にして、強引なシュートを放ったサディクに久保がボールを要求すると、手を合わせて謝る場面もあり、試合後にも久保がサディクに対して真剣な面持ちで話しかける姿も見られた。
怪我での出遅れがあるとはいえ、昨シーズン久保とセルロート(現ビジャレアル)が作り上げた関係性にはまだ程遠さを感じさせた。