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日本勢期待の星Moto3の古里太陽が初表彰台獲得 才能の源たる身体能力の高さは子どもの頃の器械体操経験の賜物 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2023/11/07 11:04

日本勢期待の星Moto3の古里太陽が初表彰台獲得 才能の源たる身体能力の高さは子どもの頃の器械体操経験の賜物<Number Web> photograph by Satoshi Endo

Moto3で初めての2位表彰台を喜ぶ古里太陽とチームアジアのスタッフたち。青山博一監督も会心の笑顔だ

 今大会も最後まで優勝争いに加わったのは、マシアと太陽のホンダ勢に、ガスガスのダビド・アロンソ、ハスクバーナのコーリン・ベイジャーだった。その中で「もっとも強敵だったのは?」という質問に太陽はこう答えてくれた。

「アロンソですね。アロンソはストレートが速くてブレーキも良かった。コーリンはストレートは速いけどブレーキはそうでもなかった。最後は最終コーナーでマシアが来たけど、止まり切れないと思ったし、クロスラインでしっかり抜き返せた」

 今大会はレース中に初めてトップを走っただけではなく、初めてホンダ勢首位でゴール。優勝こそ逃したが、現在のMoto3クラスのマシンのパフォーマンスを考えれば、4勝目を挙げたアロンソと比べてもライダーの評価で見劣りすることはない。

日本勢の期待の星

 太陽はグランプリを運営統括するドルナとホンダが開催する育成シリーズのアジアタレントカップで、史上初の7戦全勝という記録を樹立。ヨーロッパで開催されるルーキーズカップでも、シーズン途中に出場したイタリア大会でデビューウインを成し遂げて話題を集めた。通常、ホンダの育成ライダーは、アジアタレントカップで結果を残せばスペインを中心に開催されるMoto3ジュニア世界選手権に出場し、好成績を残せばさらに世界戦へという道筋をたどる。だが太陽は、アジアタレントカップ、ルーキーズから飛び級で世界戦に参戦し、2年目にして表彰台獲得を果たした。

 所属するチームアジアの青山博一監督からは、「今年の目標は、ポイントで40点獲得、初表彰台獲得」といわれている。シーズン前半はいいレースをしても転倒が多く、なかなかか結果につながらなかったが、後半戦に入ると予選ではQ2(上位18台までの選手で戦う)にほぼ毎戦進出し、決勝でもポイント獲得圏内でフィニッシュ。第15戦インドネシアGPでは今季ベストグリッドの6番手を得て、決勝は過去ベストリザルトの7位。第16戦オーストラリアGPでは予選はミスをして21番手グリッドだったが、追い上げてやはり7位でゴール。そして3連戦最後の第17戦タイGPで初表彰台を獲得した。

 太陽の走りの良さは、ブレーキングからクリップまでの速さにある。ほかのライダーよりもややインに入るのが早く、それが育成シリーズでの際立つ走りにつながったが、世界のトップライダーが集結するグランプリではなかなか通用しなかった。コーナーでクリップにつくのが早い分、向きを変えるのが遅れ、結果的にアクセルを開けるタイミングも遅れる。その遅れを取り戻すためにブレーキングで無理をして転ぶ。こうして太陽は、ただでさえストレートでアドバンテージを持つKTM勢に苦戦してきたが、タイGPはサーキットのキャラクターと太陽の走りの相性が良かったこともあり、太陽の走りの良さが際立った。

【次ページ】 黄金世代の一角として

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