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「阪神ファンの多くが“山本由伸ラスト登板”を最後まで」「道頓堀では外国人観光客が珍しそうに…」日本シリーズ関西対決“ウラ探訪記”

posted2023/11/06 17:55

 
「阪神ファンの多くが“山本由伸ラスト登板”を最後まで」「道頓堀では外国人観光客が珍しそうに…」日本シリーズ関西対決“ウラ探訪記”<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

“日本ラスト登板”で完投勝利した山本由伸。阪神ファンも凝視していた

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph by

Nanae Suzuki

 38年ぶりの日本一を成し遂げた阪神タイガース。全7試合を観戦した関西在住のライターが観客席で見聞した“テレビでは聞き取りきれない”阪神ファンのディープすぎる習性や関西対決の裏側をお伝えする。(全2回の第2回/前編へ)

 日本シリーズを日々観戦し、阪神ファンの会話や行動を目にして、強烈なインパクトを感じた。例えば今年からFA移籍でオリックスに加わった森友哉である。彼は堺出身だが……。

「もりー、おれは南海と阪神乗り継いでここまで来てんねんぞー」

「ほんまは阪神行きたかったん違うんかー」

 何とか森の顔を客席の方に向かせようとしているのだ。

オリックスファンと阪神ファンの気質の違いとは

 点が入って観客席が沸き立つのは、どのチームでも同じではある。ただ阪神以外のチームの場合、たとえばオリックスでもヤクルトでも、知らない人同士でハイタッチをするときには、一瞬のためらいのようなものを感じる。それが一般的だと思うのだが、阪神ファンは点が入った瞬間に激しくハイタッチをし、ガッツポーズの応酬をしている。ためらいが全くないのだ。

 思うに、阪神ファンは生まれついての「阪神ファン」が多くて、知らない人同士でもユニフォームを着れば即座に「同質感」が生まれるのだろう。

 オリックスの場合、40歳以上のファンだと、元は近鉄ファンだったり、イチロー時代からのオリックスファンだったり、古ければ阪急ファンだったりする。出自が違うし、価値観も同じとは限らない。だから「あ、ハイタッチしてもいいんですよね」みたいな遠慮が一瞬生じるのだろう。

 しかし阪神ファンは「阪神ファンだ」という一転で、一挙に同化する。この辺りが最強のファンと言われる所以だろう。

山本由伸のインタビューを見届ける多くの阪神ファン

 今回の日本シリーズのスタジアム、阪神甲子園球場と京セラドームは、阪神本線、阪神なんば線、近鉄奈良線(相互乗り入れ)と名称こそ違え、一本の線路でつながっている。

 以前はシーズン中、両方の球場で試合があった帰りなど、阪神ファンでいっぱいの電車に「ドーム前駅」でオリックスのファンが乗り込むと、座席に座った阪神ファンは上目遣いに「何や、オリックスかい」という表情をしたものだが、3連覇した今年は、リスペクトの気配が見える。

【次ページ】 阪神が負けても「ええ試合やったなあ」「オリ、やるやん」

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