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ドラフトウラ話「指名漏れを思うと当日会見は…」「調査書の数は公言していいのか」無名公立校“テレビに映らない”ドタバタ現場《ヤクルト育成2位》 

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井上幸太

井上幸太Kota Inoue

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posted2023/11/02 06:02

ドラフトウラ話「指名漏れを思うと当日会見は…」「調査書の数は公言していいのか」無名公立校“テレビに映らない”ドタバタ現場《ヤクルト育成2位》<Number Web> photograph by Kota Inoue

島根の公立校・三刀屋(みとや)から初のプロ野球選手となった髙野颯太

「少しでもプラス材料になればと思って、結構、外野からのスローイングがいいんですよ、と伝えて、サードだけでなく、外野でのノックも見てもらえないかとお願いしました。ある球団は実際に見てくださって、『たしかに外野の方が捕球からスローイングに入るタイミングが合いますね』と言ってもらえました。でも、中には『いえ、サードの守備練習が見たかったので大丈夫です』と一切外野に興味を示さない球団もあって。もし夏も外野だったら、調査書はもっと減っていた可能性はある。サードができる右打者だから評価してもらっていると実感しました」

 プロ志望の意志を固めた後も、やらなければならないことは無数にある。まず重要なのが、ドラフト指名がなかった場合の進路をどうするか、通称「プロ待ち」の先をどうするかだ。

ドラフト前“調査書”の数「正直に言っていいのかな」

 4月の岡山遠征に赴いた際には、2014年に藤井皓哉(ソフトバンク)を送り出し、その後も数人の選手でプロ待ちを経験した、おかやま山陽を率いる堤尚彦監督に意見を仰いだ。

 髙野の希望を踏まえ、育成指名を含めて待ってくれる進路先を探した結果、昨秋の中国大会時点で獲得を熱望していた関東の大学など、数チームが候補に浮上。最終的には「仮に今回指名漏れでも、最短で行ける道に進みたい」という本人の強い希望もあり、ある独立リーグの球団から入団内定を得て、指名を待った。

 調査書が出そろった後も、各球団のスカウトから引き続き連絡が来る。問われるのは、「何球団から調査書の提出があったか」だった。

「ドラフト当日の展開をシミュレーションするために、指名の可能性がある球団を把握しておかなければならないみたいで。でも、何度も言うように経験がないので、『これって正直に言っていいのかな?』と不安になりました(苦笑)。あと、調査書を出されない球団のスカウトの方が『うちは指名できないけど、もし漏れて進路に困ったら連絡してください。紹介できる先は話しますから』と言ってくださることもあって。すごくシビアに選手を見極められる方々ですけど、一人の高校生に親身になってくださる、人情がある方が多いのに驚きました」

【次ページ】 「もし漏れたときのことを思うと…」ドラフト当日の会見形式

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