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「ああ、身ぐるみ剥がされる」マルセイユ超危険地帯で“九死に一生”「危険を冒すべきではなかった」天才MFジダンの故郷で見た貧困の闇 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byXavier DESMIER/Getty Images

posted2023/10/28 11:02

「ああ、身ぐるみ剥がされる」マルセイユ超危険地帯で“九死に一生”「危険を冒すべきではなかった」天才MFジダンの故郷で見た貧困の闇<Number Web> photograph by Xavier DESMIER/Getty Images

ジダンが生まれ育ったマルセイユの地には“影の部分”があった

 筆者は、9月16日から10月3日までの18日間、ラグビーW杯のプールステージの試合を見るためフランスに滞在した。本当は準々決勝以降の試合を見たかったが、どうしてもチケットが買えず、今年1月のリセール(公式サイトで購入されたチケットがキャンセルされ、それが再販売された)で買えたチケットをつなぎ合わせたらこのスケジュールになった。

 当初は5枚しか持っていなかったが、大会が始まってからキャンセルが出て、運良く9月28日の日本対サモア、29日のニュージーランド対イタリアのチケットを追加で買うことができた。

民泊した家の主人は退役軍人だった

 9月16日朝、フランスに到着し、その夜はパリの友人宅に宿泊。17日、中部サンテティエンヌでオーストラリア対フィジー(フィジーが22-15の劇的勝利)を観戦した。そして、18日、フランスを北から南へTGV(フランスの新幹線)で縦断してマルセイユに入った。

 この町には何度か来たことがあり、伸びやかな雰囲気が気に入っていた。21日にここでフランス対ナミビアを観戦する予定で、それまで少し滞在して街歩きを楽しもうと考えたのだ。

 滞在先は、民泊で見つけたソッソという男の家。二間の小さなアパートで、彼は寝室を客に提供し、自分は居間のソファーで寝る、ということのようだった。

 49歳の退役軍人で、パラシュート部隊にいたという。父親がアルジェリア人、母親がモロッコ人だが、本人は生まれも育ちもフランスだそうだ。

 大変なおしゃべりで「フランスでアラブ系がいかにひどい人種差別を受けているか」を延々と話し続ける。4泊5日滞在したが、自分で話を終えたことが一度もなかった。話が決して終わらないので、何か言いたいこと、聞きたいことがあれば彼の話を遮って口を挟むしかない。

ジダンの故郷は「最も危険な地区の一つ」

 フットボール・ジャーナリストである僕にとって「マルセイユ」と言えば元フランス代表MFジネディーヌ・ジダンの故郷だ。

 ジダンは、市の北部にあるラ・カステランという地区で生まれ育っている。フランスへ渡る前、この地区について調べたところ「失業、貧困、麻薬取引の町で、非常に危険」とわかった。だから、NumberWebの編集者にも「マルセイユに行きますが、まだ死にたくないのでジダンの故郷には行きません」と明言していた。ブラジルの友人にも、そう告げていた。

【次ページ】 危険察知能力はかなり発達しているはず…

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ジネディーヌ・ジダン
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