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《日本勢3人目の快挙》雨でも速いマシンでもないのに、角田裕毅がファステストラップを刻めた理由とは 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool

posted2023/10/25 17:01

《日本勢3人目の快挙》雨でも速いマシンでもないのに、角田裕毅がファステストラップを刻めた理由とは<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

アメリカGPで、角田は今季4度目にして最高位の8位で入賞を果たした

 しかし、チームが無線で「最後までベストを尽くそう」と励ますと、角田は再び前を追い始める。すると、ここで幸運が角田に訪れる。44周目に抜かれたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がスローダウン。これで再び入賞圏内となる10番手へ入る。

 さらにチームは11番手を走っている背後のアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)との差に注目。50周目に15秒だった差は53周目には21秒にまで広がっていた。この3周のラップタイムはレースで2位となったランド・ノリス(マクラーレン)をすべてのラップで上回っていた。

 21秒というマージンを築いたことで、角田はもう一度ピットインしてもポジションを明け渡すことなく、コースに復帰できることになった。ここでアルファタウリは新品のタイヤに交換してファステストラップを狙うため、角田にピットインの指示を送った。

「『ピットインしろ』と言われたとき、エンジンか何かにトラブルでも起きたのかと思って、心臓が止まりそうになった」と言う角田だが、そのあとチームから「ファステストラップを取りに行くんだ」という説明を受けて納得。残り3周でピットインした角田は、残り2周でタイヤを温め、「よし、行くぞ!!」という気持ちで、ファイナルラップのワンチャンスに挑んだ。

 セクター1を区間全体ベストで通過した角田は、残る2つのセクターも区間全体ベストでクリア。1分38秒139というタイムを叩き出して、ファステストラップを獲得した。

今季の成長の証

「素晴らしい仕事をしてくれたチームのみんなに、おめでとうと言いたい。ファステストラップを狙ったのは初めての経験だったけど、本当にスリリングで楽しかった。この勢いを最終戦まで続けたい」

 レース後、そう喜ぶ角田に、さらなる幸運が舞い込む。上位入賞者2人が失格となったため角田の順位は2つ繰り上がり、8位の4点とともにファステストラップの1点を追加し、合計5点を獲得することに成功。コンストラクターズ選手権で9位のハースは無得点に終わったため、その差は2点と急接近。それを可能にしたのは、最後まで諦めずに攻め続けた角田の走りだった。

 日本人3人目となるファステストラップを記録した角田。この先、どんなドライバーへと成長し、どんな未来が待っているのか、楽しみにしたい。

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