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「あれは留学生だよ…」箱根駅伝予選会、“1年生が日本人トップ”の衝撃…前田和摩(18)とは何者か?「中学までサッカー部」「じつは長距離が苦手だった」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/10/16 06:01

「あれは留学生だよ…」箱根駅伝予選会、“1年生が日本人トップ”の衝撃…前田和摩(18)とは何者か?「中学までサッカー部」「じつは長距離が苦手だった」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

箱根駅伝予選会で「留学生だよ」と感嘆する声も漏れ出た東農大の1年生、前田和摩。兵庫県の西宮で育ったスーパールーキーは何者なのか

「(日本人トップは)無理な目標ではないな、と思っていました。僕は長い距離のほうが得意なので、自信は持っていました」

強豪校監督は「今の活躍は特に驚きではない」

 まぐれでも何でもない。今年6月に開催された全日本大学駅伝の関東選考会でも、自身初となる10000mのトラックレースでケニア人留学生たちと互角以上の戦いを披露し、28分03秒51でぶっちぎりの日本人トップを取っているのだ。相模原ギオンスタジアムを大きく沸かせ、東農大に14大会ぶりとなる伊勢路行きの切符をもたらしている。

 1年目から強烈なインパクトを残すランナーは、全国高校駅伝にこそ出場していないが、報徳学園高校の頃からその名を知られた存在だった。ある強豪大学の監督は「今の活躍は特に驚きではない。もともと力のあった選手ですから」とさらりと話す。3年時にはインターハイの5000mで日本人1位になるなど、箱根駅伝のシード常連校からもずっとマークされていた。希望すれば、強豪大学にも進むことができたはず。それでも、本人が選んだのは、9年連続で箱根駅伝の予選会で敗退していた東農大だった。

最終的な目標はマラソン日本代表として五輪入賞

「僕の将来のことをしっかり考えてくれていました。箱根は憧れの舞台の一つですが、最終的な目標はオリンピックのマラソン日本代表として世界と戦い、入賞すること。そのためにも、大学ではケガしないように自分のペースで練習をじっくり積ませてもらえる環境を大切にしたかったんです」

 ランナーの脚は、『消耗品』であることを本人が一番理解している。大学4年間で無理に脚をすり減らし、実業団で走れなくなることは避けたいという。強豪大学では当たり前にこなす強度の高い練習に耐えられるほど、まだタフではないことも自分で分かっている。東農大に入り、コツコツと補強トレーニングに取り組み、徐々に体作りも進めているところ。基本のジョグにも気を使う。あえてペースを落とし、長い距離をゆっくりと走ることを心がけている。ジョグで体を調整し、ポイント練習にはしっかり力を注ぐ。

もっと練習させれば、すぐにタイムは出ますけどね

 指導陣の理解もある。小指徹監督自身、現役時代に故障に悩まされたことがあり、細心の注意を払ってくれる。入学前には報徳学園の平山征志先生とコミュニケーションを取り、前田の育成方法について話し合ったという。

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