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高校野球の“丸刈り強制”ルール…もし裁判で争ったらどうなる? 弁護士が“驚きの答え”「合理性があると判断される」「5年後はわからない」

posted2023/10/01 11:01

 
高校野球の“丸刈り強制”ルール…もし裁判で争ったらどうなる? 弁護士が“驚きの答え”「合理性があると判断される」「5年後はわからない」<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

丸刈りの強制は人権侵害に抵触するのか? そして、どこまでの言動ならパワハラ認定を免れるのか? 弁護士に聞いた

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 不思議だ。なぜ、今の時代、高校野球の世界は、丸刈りの「強制」が許容されているのか。世界的に人権意識が高まる中、髪型は、もはや自己表現の一部と言っていい。もちろん、合理的な理由があればいいのだが、誰もが納得できるような根拠があるわけでもない。おそらくは、深い考えもなく、高校野球界はここまできてしまったのだ。つくづく不思議な世界である。

 高校球界の謎は、法律的には、いったいどう解釈されるのだろうか。丸刈りの強制は人権侵害に抵触するのか否か、あるいは、どこまでの言動ならパワハラ認定を免れるのか等々、木蓮経営法律事務所の弁護士・社会保険労務士で、高校野球の経験者でもある松坂典洋氏に話を聞いた。〈全3回の#1/#2#3へ〉

これまで「丸刈り強制」で争われた裁判は?

――5年に一度、高野連が行っているアンケートで、今年、長髪やスポーツ刈りを認めていると答えた高校は約4分の3もあったんです。5年前は4分の1程度だったので、わずか5年でこんなに変わったのかと思ったのですが、甲子園に出場した高校をみると、髪型は自由なんだろうなと思われたチームは49校中7校しかありませんでした。中には「うちは自由だけど、選手が自主的に丸刈りにしている」というチームもあったようですが。ズバリうかがいたいのですが、現代において、丸刈りの強制は人権侵害にはならないのでしょうか。

松坂典洋弁護士(以下、松坂) もし裁判で争われることになったら、主に2つの人権(の制限)が問題に上がるでしょうね。1つは憲法13条から導き出される自己決定権。髪型は自分の意思で決定する権利があるのに、それが制限されているわけです。もう1つは憲法21条が保障している表現の自由です。これも重要な権利なので、自己表現のひとつである髪型を制限することが許されるのか問題になってくると思います。

――これまで、丸刈りの強制について争われた裁判はあるのでしょうか。

【次ページ】 「丸刈りルールは合理性があると判断される」なぜ?

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